131.01

【分野】磁気記録

【タイトル】MAMRヘッドのマイクロ波発振効率を劇的に高める新しいSTO構造

【出典】
MMM-INTERMAG 2016, JOINT CONFERENCE, AB-11. Dual Side Spin Transfer Spin Torque Oscillator for Microwave Assisted Magnetic Recording. J. Zhu. Data Storage Systems Center, Carnegie Mellon Univ, Pittsburgh, PA
(http://magnetism.org/data_files/Final_2016_Joint_Abstract_EBook.pdf)
92, 214402 (2015).

【概要】
カーネギーメロン大のZhuが、MAMR (Micro-wave Assisted Magnetic Recording)ヘッドのマイクロ波発振効率を約2倍に高めることができる、新しいSTO (Spin Torque Oscillator)構造について発表を行った。その基本構造は、発振層の両界面にスピン注入層を有するデュアル構造である。この構造では互いの磁化が反平行に向かい合うことが必要であるが、今回の発表の斬新さは、その反平行配列の達成方法にある。

【本文】
MAMRはTAMR (Thermally Assisted Magnetic Recording) と並んで、次世代HDDの新しい記録方式として有望視されている。この技術のポイントは、垂直磁化型STOでどれだけ強いマイクロ波を発生できるかにある。STOからのマイクロ波強度を上げるためには、より大きな磁気体積を発振させる必要があるため、スピントルクを強めることが非常に重要になる。発振層の両界面にスピン注入層を設けた、デュアル構造は、その方法の一つである。しかしデュアル構造では、スピン注入層の磁化の向きを、両界面で反平行に保たなければならない。実際のヘッドでは、STOは強い記録磁界中に置かれるため、そのような磁気配列を静磁気的設計によって達成することは困難であった。Zhuが今回発表したデュアル構造の特徴は、スピントルクを利用して反平行状態を達成することにある。
スピン注入層と発振層の磁化は、電流ゼロではともに磁界の向きに平行である。従来のSTOはスピン注入層から発振層に向かって電流を印可することで、反射のスピントルクにより発振層の磁化が回転する。今回の発表では、スピン注入層を比較的薄い軟磁性層で形成して、発振層からスピン注入層の方向に通電すると、同様に発振層の磁化回転が得られることが示された。メカニズムは、スピン注入層が発振層からのスピントルクを受けて、容易に発振層と反平行になり、透過のスピントルクを作用させる点にある。最終的な構成は、一方を垂直磁化膜によるスピン注入層とし、もう一方を軟磁性膜によるスピン注入層としている。これにより、従来構成に対して半分の電流密度で同等の発振状態を達成できるとする計算結果が示された。
今後、MAMRヘッドの実用化に寄与する、重要な研究結果と考えられる。

(東芝 鴻井克彦)