126.01

分野:
磁気記録
タイトル:
In-Zn-Oスペーサを用いたCPP-GMR素子
出典:
“TMRC2015, Session D3, “ Recent progress in CPP-GMR readers for 1Tb/in2”, T. M. Nakatani*, G. Mihajlović, J. C. Read, Y-S. Choi, M. J. Carey, N. Smith, P. van der Heijden, J. Lille, H. W. Tseng, P. M. Braganca, J. A. Katine, C. H. Tsang, and J. R. Childress – HGST, San Jose, CA.
概要
HGSTの中谷らは、今年8月17日から19日に、米国のミネソタ大で行われたTMRC2015の招待講演において、MR比26%かつ、RA(面積抵抗)~0.1Ωμm2のCPP-GMR素子特性を報告した。具体的には、新しいスペーサ構造であるAg/In-Zn-O/Znと、ピンおよびフリー層にCoFeMnGeホイスラー合金とを用いている。
本文
HDDの高記録密度技術として開発されている、瓦書き記録やエネルギーアシスト記録などにより記録トラック幅が狭まると、再生ヘッドには、現行のMgOスペーサを用いたTMRの限界を超える低RA(<0.3Ωμm2)において大きなMR比を有するMR素子が求められる。中谷らは、1nm厚以下の極薄Ag層、10wt%程度のZnOを含むIn2O3酸化層、および1nm以下の極薄Zn層を積層した新規なスペーサ材料を開発した。これにより、従来のZnO系スペーサ(MR比~20% / RA~0.3Ωμm2)に比べて小さなRAで大きなMR比を達成した。具体的には、B2規則相のCoFeMnGeホイスラー合金磁性層のピン層およびフリー層を用いた多結晶スピンバルブ素子を作製して、MR比~26%かつ低RA~0.1Ωμm2のMR特性を実現した。熱処理温度はホイスラー系としては比較的低温の300℃以下であり、これは一般的な磁気ヘッド加工プロセスと整合性がある。また、従来のAg単層スペーサなどを用いたCPP-GMRでは、RAが低すぎるため(<0.05 Ωμm2)、バイアス電圧(Vb)が増大すると、フリー層に対するスピントルクによる感度の低下が顕著である。そのため、出力(MR比×Vbに比例)がTMRに比べて一桁程度小さい問題を抱える。しかし、この新規スペーサでは、RAが適切に調整されたことでスピントルクによる出力低下が大幅に抑制され、従来のCPP-GMRに比べて約5倍の高出力が期待できる。CPP-GMRのスピントルク問題を解決する新規スペースとして、MR発現メカニズムの解明なども含めて、今後の発展が期待される。

(東芝 鴻井克彦)