82.01

分野:
磁気物理
タイトル:
グラフェンにおける磁性と近藤効果
出典:
1) J. Chen, L. Li, W. G. Cullen, E. D. Williams and M. S. Fuhrer, “Tunable Kondo effect in graphene with defects”, Nature Physics, doi:10.1038/nphys1962 (2011).
2) http://www.newsdesk.umd.edu/uniini/release.cfm?ArticleID=2390
 
概要:

メリーランド大学のFuhrer教授らの研究グループは、近年、ナノ構造材料として注目を集めているグラフェンにおける磁性を調べ、伝導電子との相互作用により生じる近藤効果を確認したことをNature Physicsの電子版に発表した。また、同大学のプレスリリースにも概要が掲載されている。グラフェンはグラファイトを構成する網目構造を有する原子層一層分を引き剥がしたものである。非常に高強度であり、かつ高い伝導性を持つことから2次元のナノ機能性材料として様々な研究が行われている。今回の報告は、この炭素原子のみから構成されるグラフェンにおいて、磁気モーメントと伝導電子による相互作用である近藤効果を比較的高い温度(90K)で確認し、グラフェンが強磁性を示すことを示唆したものである。

これまで、炭素系の強磁性体は有機化合物を熱分解して得られるグラファイト化途上炭素において室温付近で強磁性を示すものが報告されているが、その磁性の起源は不完全な炭素網目構造におけるラジカルスピンであると考えられている。本報告で取り上げるグラフェンも同様の網目構造を持っていることから、何らかの方法で構造中に欠陥を作れば不対電子が生じ、ラジカルスピンを起源とする強磁性の発現が期待される。今回、Fuhrer教授らの研究グループは、空格子点を有するグラフェンにおいて、この空格子点が磁気モーメントの働きをし、伝導電子と相互作用することで電気抵抗が変化する現象、すなわち近藤効果を確認した。さらに、グラフェン上に設けた電極により、電場を加えてキャリア濃度を変化させることで、近藤効果が発現する温度を制御できることを報告している。Fuhrer教授は、グラフェンにおける空格子点を適切に配置することができれば、グラフェン中の伝導電子と磁気モーメントの強い相互作用によって磁気的な秩序が実現され、強磁性を示すようになることを示唆している。 

(埼玉大学 柿崎 浩一)