71.01

分野:
磁気物理
タイトル:
CoFeB/MgO/CoFeBトンネル接合における巨大整流効果
出典:
“Large Diode Sensitivity of CoFeB/MgO/CoFeB Magnetic Tunnel Junctions” S. Ishibashi, T. Seki, T. Nozaki, H. Kubota, S. Yakata, A. Fukushima, S. Yuasa, H. Maehara, K. Tsunekawa, D. D. Djayaprawira, and Y. Suzuki, Appl. Phys. Express 3, 073001 (2010).
 
概要:
CoFeB/MgO/CoFeBトンネル接合においてスピントルクダイオード効果による整流電圧を測定した。自由層として面直磁化したCo16Fe64B20を用いることでスピントルク誘起磁化ダイナミクスの臨界電流を低減し、最大で180μVの整流電圧と170mV/mWのダイオード感度を得ることに成功した。
本文:
 
大阪大学の石橋らはCoFeB/MgO/CoFeBトンネル接合においてスピントルクダイオード効果により得られる直流電圧の外部磁場依存性を測定した。スピントルクダイオード効果は交流電流によるスピントルク効果によってトンネル接合の自由層の磁化の共鳴振動を誘起し、整流電圧を得る現象である。スピントルクダイオード効果はギガヘルツの高周波領域において従来の半導体ダイオードに代わる高効率の整流素子として期待され、盛んに研究されている。従来のスピントルクダイオード効果の研究では面内磁化したCo60Fe20B20を自由層に用いることで100μV程度の整流電圧が得られていた(Kubota et al., Nature Physics 4, 37)。スピントルクダイオード効果により得られる整流電圧はスピントルク誘起磁化ダイナミクスの臨界電圧に逆比例することが知られている。また面直磁化した強磁性材料を自由層に用いる方が、面内磁化した自由層に比べ臨界電流が低くなることが知られている。石橋らは垂直磁気異方性を持つCo16Fe64B20を自由層に用いることで、従来の面内磁化したCo60Fe20B20自由層の臨界電流(2.1x107A/cm2: Wada et al., Phys. Rev. B 81, 104410) に比べ半分以下の電流 (9.1x106A/cm2) でスピントルク誘起磁化ダイナミクスを実現した。そして外部磁場(3.5kOe)を面直方向に印加した場合に、スピントルクダイオード効果によって180μVの整流電圧が得られることを見出した。またダイオード感度(整流電圧と交流電力の比)は最大で170mV/mWであった。これはショトッキー・ダイオードの感度(室温で500mV/mW)と同程度である。今後はより高効率のスピン注入によって半導体ダイオードを凌駕する整流電圧・ダイオード感度の実現が期待される。 
 

(筑波大学・産総研 谷口 知大)