27.04

分野:
磁気物理
出典:
Applied Physics Letters 89, 052504 (2006)
タイトル:
反強磁性L10型Mn合金の磁気異方性エネルギー
概要:
 東北大梅津・佐久間等は、スピンバルブ膜として応用の期待されるL10型結晶構造を有するMn系合金についてスピン-軌道相互作用を考慮したLMTO法によるバンド計算を行い、この系ではMnPtのみが磁気異方性エネルギーの符号が異なることを示し、その大きさは電子数に非常に敏感であることを解明した。また、その振舞いは磁気相図と関連することを示した。
本文:
 
反強磁性体がスピンバルブ膜材料として応用されるようになってからそのデバイス特性に関する研究が盛んに行われるようになっている。Mn系合金は、ネール点が高いものが多く、大きな磁気モーメントを有するので交換結合膜中の反強磁性膜材料として優れている。スピンバルブのデバイス特性についての研究は盛んであるが反強磁性体自身の系統的な基礎磁性は研究が進んでいなかった。

 東北大の梅津・佐久間等はスピン密度近似を用いたLMTO(linear mufinitin orbital method)法にスピン-軌道相互作用を考慮した計算をL10型MnTM(TM=Ir,Pt,Pd, Ni)について系統的に行い、Mn系反強磁性体の性質を電子論的観点から解明した。この系においてはMnIrが-20.77×106 J/m3という非常に高い磁気異方性エネルギーを持つこと、また、L10型MnTMのうちMnPt系のみが正の磁気異方性エネルギーをもつことが示され、その大きさは系の電子数に敏感であることを報告した (APL89, 052504 (2006))。 また、MnTM合金のなかでMnPt系合金だけがネール点以下で磁気相転移を起こすことが知られているが、このようなMnPtの特異な磁気相図と今回理論計算によって明らかにされた電子・磁気構造とが密接に関わっていることが示された。

 実用材料としてのデバイス特性についての研究が先行している物質群について、このような基礎研究が進展すれば、今後の材料開発がさらに進むと期待される。

(独立行政法人 日本原子力研究開発機構 安居院あかね)