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12.02(ワイドギャップ強磁性半導体に関する国際ワークショップ(2005/5/15 – 5/19、エジン バラ、イギリス))

分野:
磁気物理
タイトル:
ワイドギャップ強磁性半導体の現状に関する国際ワークショップ報告
概要:
 ワイドギャップ強磁性半導体に関する国際ワークショップ(2005/5/15 – 5/19、エジン バラ、イギリス)が開催され、GaN:Mn、GaN:Gd,ZnO:Co、ZnO:Mnなどに関する最新の実験結果と理論に関する議論が集中的に行われた。
本文:
 
近年、GaNやZnO等のワイドギャップ半導体をベースとした”強磁性半導体物質”が多数報告されている。しかしながら、それらの磁化状態は理論予測と必ずしも一致せず、そもそも、実験グループ間でさえ大きな相違が見られることが問題になっている。本会議は最新の研究結果を基に、理論・実験両面における問題点を研究者間で認識することにより今後の指針とすることである。
 冒頭で東北大学の大野より強磁性半導体開発における注意点が提示された。特に、微量の磁性不純物はX線回折法やTEM観察では検出が困難であること、磁化データを用いたCurie温度の決定方法に誤った例が多数見受けられることが説明された。
 GaN:Mnはこれまで多くの研究グループにより室温を超える強磁性特性が報告されているが、ワルシャワ大学のSawickiはバルク結晶を用いた磁化測定よりMn間には反強磁性的な磁気的相互作用が優勢であることを示し、同時に観測される強磁性成分は磁性析出物からの寄与であると結論した。これに対して、ユーリッヒ大学のDederichsはモンテカルロ法を組み込んだ第一原理計算より、Mn間は強磁性相互作用が優勢であることを示した。ただし、予想されるキュリー温度は実験値の数分の一程度に留まる。また、ベルリン大学のPloogはGaN:Gd系において、700K以上のキュリー温度およびGd原子当たり4,000ボーア磁子にも達する巨大磁気モーメントを報告した(Physical Review Letter 94, (2005) 037205に掲載) 。しかし、これらの物性値が常識では理解できず、本来であれば強磁性的振る舞いを示すべきゼーマン分裂幅の磁場依存性が常磁性的であることから、本質的な強磁性半導体との解釈に対して疑問が呈された。一方、Nottingahm大学のEdmondsは閃亜鉛鉱型GaN:Mnがp-type伝導を示すことを報告し、注目された。ただし、このメカニズムに関しては現在調査中とした。
 ZnO:Co, ZnO:Mnも室温強磁性特性が多数報告されている物質系である。本会議でも GaN系と同様に本質的な強磁性半導体であると主張するグループとそれを否定するグループが対峙した。このうちZnO:Coに関して、CNRSのPetroffは軟X線による磁気円二色性測定より強磁性の起源は CoクラスターもしくはCo酸化物と考えられる磁性不純物であることを明らかにした。この結果は、以前報告された産総研の安藤による可視光MCDによる評価結果と一致する。一方、大阪大学の田端はZnO:Coの磁気特性は結晶品位に強く依存し、原子レベルで平滑な基板を用いた高品位単結晶膜で初めて本質的な強磁性半導体が得られるとした。
 理論面では、磁性半導体の諸物性に及ぼす従来の平均場近似では扱うことのできない効果の重要性が認識された。前述のDederichs等により磁性半導体のキュリー温度の見積もりには磁性元素間に働く磁気的相互作用の距離依存性が重要であることが強調された。特にワイドギャップ半導体では磁気相互作用は極めて短距離であることから、キュリー温度は従来の平均場近似を用いた予想値を大幅に下回る結果を得た。東北大学の白井は、GaN:Crの磁化状態は原子空孔に強く依存することを示した。さらに、大阪大学の吉田は半導体中の磁性元素の分布に関してそのエネルギー状態を計算し、ランダム分布よりも不均一分布のほうが安定であることを示した。この効果は当然キュリー温度等の諸物性に反映されるとした。

(産総研 斉藤秀和)