10.05(第16回化合物新磁性材料専門研究会から)

分野:
磁気物理
タイトル:
重い電子系化合物における最近の話題
出典:
第9回SPring-8シンポジウム (2005/11/17-18)
概要:
 重い電子系化合物の構造的特徴、磁性、伝導性に関する興味深い実験結果が紹介された。
本文:
 
2005年3月11日、早大理工にて第16回化合物新磁性材料専門研究会が参加者16名を得て開催された。
 講演内容の概略は以下の通りである。
 1.「重い電子系Yb化合物YbRhSbの弱強磁性転移と圧力誘起相転移」室裕司 (東京理科大理工) :YbRhSbの単結晶育成に関してのノウハウ、また育成された単結晶を用いての磁化率を中心とした諸物性について触れ、異方性等の現状における解釈について講演がなされた。磁化測定よりYbRhSbの磁化容易軸はa-軸であるが、中性子弾性散乱では磁気モーメントはb-軸方向にメタ磁性的な配列をしている結果が得られ、RKKY相互作用の影響、格子の歪みによる結晶軸のずれ等による解釈がなされた。
 2.「軌道縮退をもつ重い電子系のGrand Kadowaki-Woods則」辻井直人 (物質・材料研究機構) :Kadowaki-Woods則では解釈できない化合物群の合成に成功したことについて触れ、この化合物群は、軌道縮退度も考慮し、かつKadowaki-Woods則の経験則の概念を拡張したGrand Kadowaki-Woods則の経験則で解釈可能であるという講演がなされた。
 3.「充填スクッテルダイトSmOs4Sb12の異常な重い電子状態」青木勇二, 真田祥太朗, 青木英和, 土屋明久, 菊地大輔, 菅原仁A, 佐藤英行(都立大院理、徳島大総合科A):重い電子状態を示すことが明らかにされた充填スクッテルダイトSmOs4Sb12の合成、諸物性に関しての講演がなされた。
 4.「強相関物質の圧力誘起超伝導の探索と超高圧容器の開発」 辺土正人 (東大物性研) :超高圧容器を開発に当たり、開発する立場からみた圧力をパラメータとした探索に関して触れるとともに、高圧容器開発のノウハウ等に関しての講演がなされた。
 5.「URu2Si2における隠れた秩序と不均一反強磁性の競合」横山淳, 網塚浩 (茨城大理, 北大理):U(Ru, Rh)2Si2における磁化測定、中性子散乱実験、圧力下での諸物性の振る舞いから明らかにされてきた現状での問題点を紹介した。
 研究会では様々な重い電子系化合物の構造的特徴、磁性、伝導性に関する興味深い実験結果を紹介して頂いた。また装置開発側の立場からみた重い電子系の物性研究に関わる重要性についても触れられた。終了予定時間を1時間程度も延長してしまうほどの活発な議論がなされていた。

(産総研 鬼頭 聖)