9.02

9.02(IEDM2004より)

NiOを用いた不揮発性メモリRRAMの試作

  2004年12月に開催されたIEDM2004でサムスン(講演番号23.6)はNiOを用いる抵抗変化型不揮発性メモリRRAMの試作を発表した。3V、2mAの電流電圧パルスで、セル抵抗値を1桁以上変化させることができる。セル抵抗値も書込み電圧もセル面積に依存しないため、高密度化に有利としている。セル内部にできるフィラメント状のパスを介して伝導が起きるとしている。
  金属-絶縁体-金属構造の抵抗値が電流電圧パルスで変化することは古くから知られている。数年前にIBM、シャープ・アメリカ、テキサス大学などからSrTiZrO:Cr,PrCaMnOなどペロブスカイト酸化物では比較的低電圧でこの現象が起こることが報告され、不揮発性メモリとしての可能性が注目されるようになった。しかしペロブスカイト酸化物はシリコンCMOSプロセスとの整合性が悪く実用化は困難であった。今回NiOというシリコンプロセスとの整合性のよい物質が使えることが分かった意義は大きい。
  ただし問題もある。発表されたデータによれば、抵抗値のバラつきが大きく、書込み速度は5μ秒と遅く、106の回程度の書き込みでショートを起こして破壊されている。現状では、DRAM並みの数10nsの高速動作と1015回以上の書き換え耐性を狙うMRAM、FeRAMとは性格が異なるフラッシュメモリ的な不揮発性メモリと見るべきであろう。
  驚異的な速度で低コスト化と大容量化が進むフラッシュメモリを凌駕する特性がだせるかどうかが勝負となろう。その意味でも、抵抗変化の機構の解明は重要である。サムスンは、Ni欠損などにより形成される酸化物バンドギャップ中の不純物バンドへのチャージング機構を提案している。d電子の役割など十分に理解されていない点も多く残っているようであり物性的にも興味が持たれる。

(産総研 安藤功兒)

スピントロニクス

次の記事

9.03