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【分野】磁気応用

【タイトル】浮くほど軽い超軽量電波吸収材料の開発と広帯域EMC制御への応用展開

【出典】

  • R. Yanagi, T. Segi, A. Ito, T. Ueno, and K. Hidaka, “Carbon-nanotube-based ultralight materials for ultrabroadband electromagnetic wave shielding and absorption,” Jpn. J. Appl. Phys., vol. 60, no. 8, Art. no. 087003 (Aug. 2021).
  • S. Muroga A. Ito, M. Kawamura, T. Ueno, K. Hidaka, M. Tanaka, O. kawasaki, “Investigation on electromagnetic wave absorbing mechanism of CNT-based ultralight materials,” in Proc. IEEE Joint Int. Symp. Electromagn. Compat., Signal Power Integrity / Asia–Pacific Int. Symp. Electromagn. Compat., Ginowan, Japan, WedAM1A.3(May 2024).
  • K. Hidaka, S. Muroga, Y. Endo, S. Ajia, M. Tanaka and T. Ueno, “Electromagnetic Wave Absorption in GHz Band Consisting of Insulation-Treated Single Walled Carbon Nanotubes in Ultra light Sheet Materials,” Asia–Pacific Int. Symp. Electromagn. Compat., Taipei, Taiwan, #1571098490(April 2025).
  • 株式会社ソラマテリアル ホームページ https://sora-materials.com/
  • Youtube チャンネル「超軽量アカデミー」https://www.youtube.com/channel/UCn5OTPowI1oOT0SecPW1GTA
  • 【概要】
    次世代通信・航空宇宙機器に求められる軽量かつ広帯域に対応した電波吸収材料として、カーボンナノチューブ(CNT)を分散した密度10 mg/cm³以下の超軽量電波吸収体が開発された。10 GHz以上の周波数帯域において電磁波の吸収および遮蔽効果を示し、CNTの含有率や導電率の制御、さらには吸収体の三次元形状設計によって、目的とする周波数帯域に応じたフィルタ特性の調整が可能である。本技術は、ミリ波通信、レーダー、eVTOL、航空宇宙機器など、高周波・高密度実装環境における電磁ノイズ抑制対策として有用である。

    【本文】
    次世代エアモビリティでは、広帯域な電磁ノイズ抑制性能と機体の軽量化の両立が強く求められている。従来の電波吸収体はフェライトやセンダストなどの磁性材料が主流であったが、重量の増加が実装上の大きな課題であった。これに対し、軽量なカーボン系材料は特にミリ波帯において高い吸収性能が期待されているが、30 GHz以下の低周波帯では十分な効果が得られにくく、新たな設計指針が求められていた。
    この課題に対して、東北大学の室賀翔准教授、名古屋大学上野智永助教、秋田大学高橋翔太郎講師らは、令和7年度の持続可能な電波有効利用のための基盤技術研究開発事業において採択された「超軽量超広帯域電波吸収体を用いた次世代エアモビリティと次世代通信の共生技術」の創生に向けて、共同研究を遂行している(本研究開発は総務省FORWARD(受付番号JPMI240210003)の委託を受けたものです)。
    本研究開発では、カーボンナノチューブ(CNT)、セルロースナノファイバー(CNF)、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)を水中に分散し、凍結乾燥することにより、密度10 mg/cm³以下の超軽量ポーラス構造体からなる電波吸収体を提案している。提案する吸収体は、空気中に浮くほどの低密度と柔軟性を併せ持っているにも関わらず、自立保持が可能な機械強度を有している(Fig. 1)。
    電波吸収性能は、自由空間法および導波管を用いた1ポートSパラメータ測定により評価された(Fig. 2)。CNTを5 wt.%含有する平板状試料(Flat sheet A)は、20 dB以下のフラットな特性を示した。一方、CNT含有率を2 wt.%に抑えた試料(Flat sheet B)では、32 GHzとその高調波に対応する帯域で明瞭な吸収ピークが観測された。さらに、5 wt.%含有材料をピラミッド状に成形した試料(Pyramidal form)では、30 GHz以上の広い周波数帯域において20 dB以上の吸収効果が得られた。また、表面に絶縁処理したCNTを15 wt.%含有する試料(Flat sheet C)では、12 GHz付近で30 dBの吸収効果を示し、低周波側への吸収帯域のシフトが可能であることが確認された。
    これらの結果から、本材料は、CNTの含有率、導電性、構造形状を統合的に設計することで、10 GHz以上の帯域における電磁波吸収特性を高い自由度で制御可能であることが明らかとなった。
    当該研究は、2025年電子機器トータルソリューション展(6月4~6日,東京ビッグサイト)にて2025アカデミックプラザ賞を受賞しました。
    https://www.jpcashow.com/show2025/academic_award/index.html

    (信州大学 曽根原 誠)

    Fig.1 浮くほど軽い超軽量電波吸収材料(出典(5)より引用)

    Fig.2 吸収効果の周波数特性の制御例 (出典(3)および(4)より引用)

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