第52回ナノマグネティックス専門研究会報告

日 時:
2013年5月31日(金) 13:30~16:45
場 所:
中央大学駿河台記念館
参加者:
18名

 次世代HDD媒体として注目を集めている自己組織化パターン媒体作製方法や磁気転写で一括パターンを形成できるHDD媒体に関する報告、超強力磁石の磁区構造を紫外光超高分解能偏光顕微鏡で磁区観察した結果やレーザー励起光を用いて超高分解能で磁気イメージングした結果など、興味深い4テーマについて講演頂いた。本研究会では発表の途中でも質疑可能なスタイルをとっており、活発な議論が行われた。

  1. 「高分子ブロック共重合体のDirected Self-assemblyによるパターン媒体加工」

    ○吉田博史1、Ricardo Ruiz 2(1日立、2HGST)

     ビットパターン磁気記録媒体の実現に必要とされる極微細パターンをDirected Self-assembly(DSA)法により得た。DSA法は高分子ブロック共重合体の自己組織化を誘導制御する技術であり、疎なパターンを補間することで既存技術の限界を超えた微細加工が可能となる。我々はシングルナノオーダーの規則的パターンを自己組織化する強偏析有機・無機ハイブリッド型高分子ブロック共重合体を開発し、そのミクロ相分離過程を精緻に制御することで5 Tera-dot/inch2超の密度で直径が数nmのドットを規則的に配列化することに成功した。

  2. 「高密度垂直磁気記録ハードディスクのための磁気転写」

    ○小峰啓史,杉田龍二(茨城大)

     1平方インチあたり1テラビットの超高記録密度ハードディスクを実現するためには、高精度なヘッドトラッキングが必須であり、高精細なサーボ信号の高速書き込み技術開発が急務である。講演では、高密度垂直磁気記録ハードディスクにサーボ信号を高速かつ安価に一括形成する技術として、磁気転写を紹介した。サーボ信号に対応する磁性膜パターンが形成されたマスター媒体磁性膜に垂直磁気異方性を有するCoPtを用いることで、従来のFeCo磁性膜を用いた場合に比べて、記録性能が向上することを示した。また、磁気転写により形成したサーボ信号品質は、垂直磁気ヘッドで記録したものと同等であること、1平方インチあたり2テラビットの高記録密度に対応するサーボ信号も磁気転写で記録可能であることが示された。

  3. 「Nd-Fe-B系磁石の磁区観察のための高分解能磁気Kerr効果顕微鏡の開発」

    ○竹澤昌晃、木村祐弥、永島優樹、森本祐治、山崎二郎(九工大)

     本発表では、ハイブリッド自動車の駆動モータ用磁石であるNd-Fe-B磁石の高温中での保磁力低下の原因を明らかにして、Dyフリーでの高耐熱磁石実現のための指針を明らかにするために開発した高分解能Kerr効果顕微鏡について紹介した。開発した顕微鏡を用いてNd-Fe-B磁石の高温・高磁界下での磁区観察を行うことで、結晶粒間の磁気的結合が保磁力と大きく関連することが明らかにされた。

  4. 「レーザー励起光電子顕微鏡の開発と高分解能磁気イメージング」

    ○谷内敏之1,2、阿部 真之介1、小谷佳範3、蜂谷智央4、大塚照久4、島 久4、秋永広幸4
    関 剛斎5、高梨弘毅5、辛 埴1,2(1東大、2JST-CREST、3JASRI、4産総研、5東北大)

     UVレーザーと超高分解能光電子顕微鏡(PEEM)を用いて、新しく磁気顕微鏡システムを開発した。大強度の連続波レーザーを用いることで従来問題となっていたスペースチャージ効果による空間分解能低下を抑制した。さらに各種収差を補正した電子光学系を導入することで10 nmの分解能で磁気イメージングが可能であることが示された。

文責:粟野博之(豊田工大)、能崎幸雄(慶大)