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第159回研究会報告
第20回スピンエレクトロニクス専門研究会報告
「半導体のスピン機能とデバイス応用」

日時:2008年3月3日(月) 13:00〜17:30
場所:化学会館7階ホール
参加者:45名

 昨今の精力的な研究により、「半導体のスピン機能」に関する理解はここ数年で急速に深まった。最近では、特にデバイスを念頭においた研究において金属系スピントロニクスとの融合も進んでおり、研究対象は材料・電気・磁気・光と多岐にわたる。今回の研究会では半導体スピン機能に関する第一線の研究者が一堂に会し、活発な議論が交わされた。本分野の今後の更なる発展が期待される研究会となった。以下に各講演の概要を示す。

講演内容:
  1. 「金属/絶縁体/半導体(MIS)型磁気トンネルダイオードにおけるスピン依存伝導」
    齋藤秀和1,2、K. C. Agarwal1, 湯浅新治1、安藤功兒1、山本明日香3(1産総研、2さきがけ、3東邦大)

     Fe/ZnSe/GaMnAs磁気トンネルダイオードにおけるスピン依存トンネル分光測定について報告がなされた。ZnSeバリアの作製上の優位性や、分光測定に基づいたGaMnAsのフェルミ面についての議論が行われた。
     
  2. 「半導体におけるスピンホール効果の観測」
    加藤雄一郎(東大)

     非磁性体であるGaAs内の伝導で観測されるスピンホール効果について紹介された。測定はミクロンオーダーの矩形GaAs試料に電流を流した際に、試料の両端に蓄積されるスピンをカー回転角顕微鏡によって観測することにより行われた。InGaAsを用いた歪みの効果や結晶方位依存性などの、詳細な報告がなされた。
     
  3. 「希薄磁性半導体の第一原理電子状態計算と高温強磁性半導体のマテリアルデザイン」
    佐藤和則(阪大)

     希薄磁性半導体の強磁性の起源と電子状態について第一原理計算に基づいた議論が行われ、モンテカルロ法によるキュリー温度の精密な計算結果が示された。また、希薄磁性半導体で問題となっている相分離に関する考察が紹介され、積極的に相分離を活用したマテリアルデザインの提案がなされた。
     
  4. 「強磁性半導体量子へテロ構造におけるスピン依存共鳴トンネル効果」
    大矢忍1,2、ファム ナム ハイ1、田中雅明1(1東大・2さきがけ)

     III-V族強磁性半導体GaMnAsを用いた量子井戸二重障壁へテロ構造において観測された共鳴トンネル効果と、それに起因したTMRの増大・振動現象の紹介がなされた。さらに、バンド計算と量子井戸準位の比較から、GaMnAsのフェルミレベルに関する議論が行われた。
     
  5. 「半導体・強磁性金属ハイブリッド光アイソレータの物理・素子・応用」
    清水大雅(農工大)

     集積可能な光アイソレータを目指した半導体・強磁性金属ハイブリッド光アイソレータに関する報告がなされた。半導体レーザーとモノシリック集積されたハイブリッド光アイソレータや、材料学的に多くの利点を持つエピタキシャルMnAsを用いたハイブリッド光アイソレータなどが紹介された。
     
  6. 「TMRロジックとその応用」
    羽生貴弘(東北大)

     強磁性トンネル磁気抵抗効果デバイスを用いたロジック回路の新しい構成方法としてTMRロジックが紹介された。全加算回路や連想メモリ(CAM)などの具体例を交えながら、次世代ロジックLSIへ向けたインパクトについての議論が行われた。
     
(文責:長浜太郎 (産総研))