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日本応用磁気学会第113回研究会 第30回光スピニクス専門研究会報告
「リムーバブル記録の現状と将来展望 −光と磁気の融合の可能性も含め て−」
 
日 時:2000年1月27日(木),1月28日(金)
場 所:湯河原厚生年金会館
参加者:83名

プログラム:
1月27日(木)

13:00〜13:10 はじめに  太田 憲雄(日立マクセル)

1. 総論
1-1. 情報家電時代におけるリムーバブルストレージの役割 天野真家(東芝)
1-2. リムーバブルストレージの市場動向と展望 藤原卓利(ふじわらロスチャイルド)
2. 光記録と磁気記録の融合技術
2-1. Data Storage高密度記録への模索 鈴木孝雄(豊田工大)
2-2. TbFeCo膜を用いた光アシスト磁気記録の基本特性 片山博之,濱本将樹,佐藤純一,小嶋邦男(シャープ)
2-3. 光記録と磁気再生を融合するための試み 根本広明,嵯峨秀樹,助田裕史,高橋正彦(日立)
2-4. マージ型GMRヘッドによるMO媒体の磁気記録再生 松本幸治,尾崎一幸,庄野敬二,田河育也* (富士通研究所,*富士通)

パネルディスカッション「光と磁気の融合技術の将来展望」

1月28日(金)
3. テープストリーマと高密度フロッピー
3-1. テープストリーマの動向と将来展望 尾末匡(ソニー)
3-2. テープストリーマ用磁気テープの高密度化要素技術 吉田秀樹(松下電器)
3-3. 高密度フロッピーに関する動向と将来展望 平中弘一(松下寿電子)
3-4. 高密度フロッピー媒体の動向と将来展望 齋籐徳太郎、宮田照久、田中憲司、菜切和彦(日立マクセル)

4. 高密度光ディスク
4-1. 光超解像法と近接場光を組み合わせた超高密度記録再生の可能性 富永淳二,*藤 寛,中野隆志,桑原正史,阿刀田伸史(産業技術融合領域研究所,*シャープ)
4-2. 相変化光記録の将来展望 寺尾元康(日立)
4-3. 青紫色半導体レーザと高開口数対物レンズを用いた相変化光記録 市村 功,笠見 裕(ソニー)
4-4. 光磁気次世代技術の将来展望 粟野博之(日立マクセル)

まとめ  佐藤 勝昭(農工大)
 
 今回の研究会は、リムーバブル記録として開発が進められている光磁気記録・相変化記録・テープストリーマ・大容量フロッピーの各技術が、今後どのように発展し、棲分けていくのか議論することを目的とし、各技術およびそれを使う立場を代表する方々に将来展望を含めた講演をしていただき、討論を行った。
 太田氏から本研究会の趣旨が紹介された後、総論で、情報化社会におけるリムーバブル記録の位置づけと市場展望に関する講演が行われた。天野氏はご自宅の情報家電システムをモデルに、ネットワークにつながっているHDDに対する記憶媒体としてリムーバブル記録のあるべき姿を述べた。HDDは信頼性が悪いが利便性が高く、それを補完する形でたとえば長期保存用としてリムーバブル媒体が使われるようになるだろうということであった。藤原氏はリムーバブル記録の市場動向についてデータに基づいた講演を行った。デジタル革命/インターネットの影響は深刻で、磁気リムーバブルは衰退する、リムーバブルの新たな敵はHDD・インターネット・フラッシュメモリとなる、CDからDVDへの移行は2〜3年遅れるといった予測を示した。また、光ディスクにおける規格化の混乱という内部の敵の影響も深刻ということであった。
 光記録と磁気記録の融合技術では、新たな進展の報告と最新の話題の提供があった。鈴木氏は、希土類-遷移金属合金の活性化体積に関する理論と実験結果から、熱安定性に関しては現行のCoCrPtとあまり違わない場合もあり、もっと議論をしていく必要があることを述べた。片山氏は、ニ層構造の光磁気媒体にレーザで加熱しながら磁気ヘッドで記録/再生を行う技術を紹介した。希土類-遷移金属特有の磁気特性を反映して、記録減磁や再生信号強度の経時変化は見られなかった。再生層の組成を調整することでクロストークを防ぐ等の着実な特性向上がはかられている。根本氏は、光磁気記録媒体を用いた光磁気記録/GMR再生の試みについて講演した。熱伝導を考慮した媒体構造に磁界変調記録を行うことにより、マーク長が100nm未満の磁区の記録/再生ができた。松本氏は、希土類-遷移金属媒体を室温で磁気録/再生を行う試みについて講演した。良好な角形性を反映して、逆磁区がなくノイズの少ない磁気記録を行うことができた。600kFCI以上の密度での記録も確認した。
 パネル討論では、初日の講演者からリムーバブル記録の将来展望、光と磁気の融合技術に関する見解が述べられた後、多くの参加者を含めたフリートークが続き、定刻を超えて熱っぽい議論が交わされた。
 テープストリーマと高密度フロッピーでは、最新技術と将来展望が概説された。尾末氏は、HDDのバックアップ用途として100GB/カートリッジの容量が要求されるテープストリーマ技術を概説し、再生ヘッドのMR化について紹介した。磨耗、サーマルアスペリティが問題点だが、ヘッド構造の工夫、強力なECCにより解決できるとの見解を述べた。吉田氏はテープストリーマ媒体の高密度化技術の紹介を行った。ヘッドのMR化に対応した、薄手化・ミクロ磁区制御技術・新しいトラッキング方式等の開発が行わ れている。平中氏は光トラッキングを行う次世代フロッピーの技術の紹介を行った。薄膜ヘッド、MR再生、PRMLの組み合わせで、1.3GBの容量も実現可能である。齋籐氏は高密度フロッピー媒体技術の紹介を行った。固形添加材が表面に適度に露出するニ層構造とMIGヘッド、PRMLにより3.5型ディスクで00MBが可能である。MRヘッドによる1Gb/in2の密度の実現性の実験の紹介もあった。
 最後に、相変化、光磁気記録の最近の高密度化技術の紹介があった。富永氏は近接場光を発生する微小開口を媒体側に設けるSuper-RENS技術の講演を行った。Sbの光学特性の温度に対する非線形性を利用した技術に加え、Ag-Oの分解過程を用いた新しいメカニズムの紹介もあった。寺尾氏はDVD-RAMの高密度化のための各社の取り組みを紹介した。現行材料系でも熱拡散設計の最適化により高密度記録は可能である。次世代は片面ニ層媒体、表面入射媒体、その先は近接場超解像を用いたものになるだろうとの見解を示した。市村氏は、GaN系青色LD、NA(開口数)0.85と、結晶化促進層、吸収率調整膜構造を用い120mmφディスクで22GBを実現する技術を紹介した。粟野氏は、光磁気記録の高密度化技術として磁区拡大再生技術の紹介を行った。100nmの磁区を拡大再生しCNR:50dBを検証した。青色レーザ、SILレンズにより300Gb/in2の実現が可能となる。
 最後に、佐藤氏が講演者の似顔絵入りの楽しいOHPで全体の講演のまとめを行った。今回の研究会は、ストレージ技術分野に携わる多くの方々の参加により、日頃接することの少ない分野の交流が実現でき、有意義なものであった。来るべきインターネット時代のストレージ技術のありようを考える上で貴重な議論ができたものと思う。


(東芝 喜々津哲)