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【分野】スピンエレクトロニクス

【タイトル】単一物質で異方性磁気ペルチェ効果を初観測

【出典】
K. Uchida, S. Daimon, R. Iguchi, and E. Saitoh, “Observation of anisotropic magneto-Peltier effect in nickel”, Nature (2018), doi: 10.1038/s41586-018-0143-x.
http://www.nims.go.jp/news/press/2018/05/201805220.html
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/press_20180522_peltier.pdf

【概要】
物質・材料研究機構 (NIMS)と東北大学の研究グループは、ロックインサーモグラフィ法と呼ばれる熱計測技術を用いることで、磁性体中で電流の流れる向きを曲げるだけで加熱や冷却ができる熱電変換現象すなわち異方性磁気ペルチェ効果を初めて観測することに成功した。

【本文】
 物質・材料研究機構 (NIMS)磁性・スピントロニクス材料研究拠点 スピンエネルギーグループの内田健一グループリーダーと東北大学 材料科学高等研究所・金属材料研究所の齊藤英治教授 (現 東京大学 教授) らの研究グループは、ロックインサーモグラフィ法と呼ばれる熱計測技術を用いることで、磁性体中で電流の流れる向きを曲げるだけで加熱や冷却ができる熱電変換現象すなわち異方性磁気ペルチェ効果を初めて観測することに成功した。
 現在、実用化されているゼーベック効果やペルチェ効果を用いた熱電変換材料は2つの異なる物質を接合した構造が用いられている。これに対して本研究では、接合のない単一物質(磁性体)を用いており、その磁気的な性質のみによって熱の制御が可能であることを実証した。磁性体において、ゼーベック効果が磁化の方向に依存することは知られていたが、その逆過程であるペルチェ効果については、これまで磁化の方向に依存して変化することを実験的に観測した例はなかった。異方性磁気ペルチェ効果が生じる磁性体では、磁化が電流に対して平行な場合と直交している場合とで、ペルチェ係数が異なり、この性質を利用することで、単一の磁性体中に非一様な磁化分布を作ることで、ペルチェ係数が異なる物質を接合したかのように発熱と吸熱を起こすことが可能となる。
 本研究ではコの字型に加工したNi試料を用い、これを一方向に磁化することで、電流の流れる経路に対して磁化の向きが、直交→平行→直交となるようにした。この試料に電流を流し、ロックインサーモグラフィ法によりその温度変化を観測したところ、コの字型Ni試料の角付近のみに発生する温度変化が観測され、その温度変化の大きさは流した電流に比例して増大したため、これが熱電効果に由来するものであると結論づけている。この測定で用いた試料はNi単一であり異なる物質の接合がないこと、また、試料が磁化していない場合には温度変化が生じないことから、これらの振る舞いは従来のペルチェ効果とは全く異なる現象であり、異方性磁気ペルチェ効果に由来していることを実証したとしている。

(埼玉大学 柿崎浩一)