124.04

分野:
スピントロニクス
タイトル:

超伝導体における巨大スピンホール効果

出典:

T. Wakamura, H. Akaike, Y. Omori, Y. Niimi, S. Takahashi, A. Fujimaki, S. Maekawa and Y. Otani, “Quasiparticle-mediated spin Hall effect in a superconductor,” Nature Materials, DOI: 10.1038/NMAT4276.

概要:
 東京大学の若村博士らは超伝導体における準粒子スピン流を介したスピンホール効果の観測に初めて成功した。超伝導転移温度以下では常伝導状態と比べて逆スピンホール効果の大きさが2000倍以上に増大することを明らかにした。
本文:
 
 近年、電子のスピンのみの流れである純スピン流がスピントロニクスの分野において基礎、応用の両面から注目されている。スピン流の生成方法にはいくつかあり、そのうちの一つにスピンホール効果がある。スピンホール効果を示す物質に電流を流すと、それと直交する方向にスピン流が生成され、またスピン流を流すとそれと直交する方向に電流が生成される(後者は逆スピンホール効果)。これまでのスピンホール効果に関する研究では、主にスピン・軌道相互作用の大きな金属や半導体が用いられてきた。
 今回東京大学の若村博士らは超伝導体におけるスピンホール効果を実験により調べた。よく知られているように超伝導体状態では電子はクーパー対を形成するが、有限温度では一部のクーパー対は壊れて準粒子(Quasiparticle)状態となる。当論文においてはこの超伝導準粒子を介したスピンホール効果の観測結果が示されている。
 実験には10K付近に超伝導転移温度を有するNbNを用い、非局所法によってスピンホール効果を観測した。温度を変えて逆スピンホール効果に由来する電圧信号を測定した結果、超伝導状態では常伝導状態と比べて2000倍以上の信号が得られることが確認された。外部磁場印加方向を変えた測定から、得られた電圧信号は逆スピンホール効果に由来することが分かり、またNbN細線の長さを変えた測定から、超伝導準粒子がスピンホール効果に寄与していることが明らかになった。
 本研究は、高効率なスピン流の生成手法、検出手法を提供するものであり、新たなスピントロニクス研究、及びそのデバイス応用を促進するものと期待される。

(東北大学 深見 俊輔)