135.01

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【分野】スピンエレクトロニクス

【タイトル】焼結ターゲットを用いたMgAl2O4スピネルトンネル磁気抵抗素子

【出典】
M. Belmoubarik, H. Sukegawa, T. Ohkubo, S. Mitani, and K. Hono, “MgAl2O4(001) based magnetic tunnel junctions made by direct sputtering of a sintered spinel target”, Applied Physics Letters 108, 132404 (2016); http://dx.doi.org/10.1063/1.4945049

【概要】
物質・材料研究機構のBelmoubarikらは、MgAl2O4焼結ターゲットから直接RFスパッタすることにより、スピネル構造の結晶質トンネルバリアを作製する手法を開発した。Feを強磁性電極に用いたTMR素子において、室温245%という高いTMR比を達成し、TMRバイアス電圧特性が良好であることを示した。

【本文】
MgAl2O4スピネル絶縁体は、Feなど強磁性材料との格子不整合性がほぼゼロであり、トンネルバリアとして用いることにより、MgO(Feと5%の格子不整合をもつ)を超えるトンネル磁気抵抗(TMR)特性を発揮することが期待されている。従来、MgAl2O4バリア層は、MgAl合金薄膜をスパッタ成膜したのち、プラズマ酸化させることにより作製されており、室温で200%を超える、MgOバリアと同等のTMRが得られていた。しかしながら、MgAl合金は、その低融点ゆえに、均一厚さの極薄膜を作製することが難しく、それゆえ低面積抵抗(RA)のTMR素子を作製することが困難であった。
今回、物質・材料研究機構のBelmoubarikらは、焼結されたMgAl2O4ターゲットから直接RFスパッタにより結晶MgAl2O4¬バリア層を作製するプロセスを開発した。単結晶Feを強磁性電極に用いたTMR素子において、室温で245%、低温3 Kで436%ものTMR比が得られ、これは同様に作製したMgOバリアを用いたTMRを超えるものである。著者らは詳細なTEMによる構造解析を行い、極めて平坦かつFe電極と完全に格子整合したMgAl2O4バリア層が得られていることを示した。論文ではMgAl2O4成膜後に500 °Cでその場アニールすることが高品質なバリアの作製に重要であると記されている。また、TMR比が半減するバイアス電圧(Vhalf)が1 V以上と高く、これはTMR素子をSTT-MRAMや磁気ヘッドに応用する際に重要な特性である。
本報告では、面内磁化の単結晶Feを電極に用いたものであるが、今後、垂直磁化膜や多結晶薄膜にMgAl2O4バリアを組み合わせたTMR素子の開発が期待される。

(物質・材料研究機構 中谷友也)