91.02

分野:
スピントロニクス
タイトル:
STT-MRAMの20nm世代での熱安定性保証に目途
出典:
“Enhancement of data retention and write current scaling for sub-20nm STT-MRAM by utilizing dual interfaces for perpendicular magnetic anisotropy”
Jeong-Heon Park, Y. Kim, W. C. Lim, J. H. Kim, S. H. Park, J. H. Kim, W. Kim, K. W. Kim, J. H. Jeong, K. S. Kim, H. Kim, Y. J. Lee, S. C. Oh, J. E. Lee, S. O. Park, S. Watts*, D. Apalkov*, V. Nikitin, M. Krounbi*, S. Jeong, S. Choi, H. K. Kang, and C. Chung
2012 Symposium on VLSI Technology, 講演番号7.1, Honolulu, Hawaii, 6/12-14, 2012.
 
 
概要:
 Samsung ElectronicsとGrandisの研究グループは半導体デバイスの主要国際学会であるSymposium on VLSI Technologyにおいて、STT-MRAMの熱安定性保証技術に関する発表を行った。データ記憶層にデュアル界面構造を用いることで20nm以下の世代においても十分な熱安定性を保証できることを報告した。
 
 
本文:
 STT-MRAM(スピントルク型磁気ランダムアクセスメモリ)は情報を不揮発に保存できることから、微細化の限界が見えつつある揮発性の半導体メモリ(SRAM、DRAMなど)の置き換え技術として注目されている。しかしSTT-MRAMでも、構成素子が微細化されるとデータ保持の熱安定性が劣化するという問題がある。STT-MRAMを実用化するためには、十分な熱安定性を維持した上で、情報の書き込みに要する電流を十分に低減する必要があるが、一般的にこの2つにはトレードオフの関係がある。
 今回Samsung ElectronicsとGrandisの研究グループは、垂直磁化型MTJ(磁気トンネル接合)膜をデュアル界面構造とすることにより、書き込み電流を増大させることなく、10年間のデータ保証に必要とされる熱安定性を得ることに成功した。当技術の要点は、情報記憶層の両側の界面にMgOを隣接させることによって界面磁気異方性エネルギーを倍にしたことにある。これまでの片側の界面から垂直磁気異方性を付与させる構造では20nmサイズの素子での熱安定性指標(エネルギーバリア/kT)が33程度であったのに対して、今回開発した構造では66程度の値が得られた。一方で書き込み電流は従来構造と同程度の値を維持しており、熱安定性あたりの書き込み電流は1/2程度となっている。
 なお、今年のVLSI TechnologyではSTT-MRAMに関するものだけで6件の発表がなされた。ここ数年は2,3件で推移していたことを考えると、半導体デバイスの業界においてスピントロニクス技術の魅力が高く認識されるようになったことが伺える。

(東北大 深見俊輔)