91.01

分野:
スピントロニクス
タイトル:
Ta膜の巨大スピンホール効果とメモリデバイス応用
出典:
“Spin-Torque Switching with the Giant Spin Hall Effect of Tantalum ”Luqiao Liu, Chi-Feng Pai, Y. Li, H. W. Tseng, D. C. Ralph, R. A. Buhrman Science, vol. 336, pp. 555-558
 
 
概要:
 コーネル大学(米国)の研究グループはβ型Taにおいて非常に大きなスピンホール効果が発現され、生ずるスピン流は隣接する磁性層の磁化反転を誘起するのに十分な大きさであることを報告した。またこの現象を用いた3端子の磁気メモリを提案した。
 
 
本文:
 コーネル大学(米国)の研究グループはβ型Taにおけるスピンホール効果を測定した結果をScience誌で発表した。スピントルク強磁性共鳴を用いた測定、隣接する垂直磁化CoFeB膜の磁化反転を用いた測定、及び隣接する面内磁化CoFeB膜の磁化反転を用いた測定のいずれにおいても、β型Ta膜のスピンホール角は0.12程度になるという結果が得られた。この値は従来からスピンホール角が大きな材料として知られていたPtを凌ぐ大きさである。また発生するスピン流の符号がPtとTaでは異なることも特筆すべき点である。
 同グループはまたこのTa膜における巨大スピンホール効果はナノ磁性体の磁化反転を誘起する方法として有用であると述べている。Ta膜はPt膜とは異なり隣接する磁性層のダンピング定数の増大を低く抑えることができ、このためより小さなスピン流によって磁性層の磁化を反転させることが可能である。実際に同グループはTa/CoFeB/MgO/CoFeB膜を数100nmサイズの3端子型の素子に加工し、1mA程度の電流での磁化反転に成功している。
 さらに同グループはこの巨大スピンホール効果を利用した3端子型の磁気メモリ素子を提案している。この素子の利点として、(1)読み出し電流パスと書き込み電流パスを分けられることによって動作の高信頼化が可能であること、(2)読み出し信号を容易に増大させられること、(3)製造が非常に容易であること、を挙げている。
 近年、磁性層と非磁性層の積層膜におけるスピンホール効果やラシュバ効果はスピントロニクス分野の新技術として国内外で盛んな研究がおこなわれている。本研究では過去の常識を遥かに上回る値が得られていることから、今後のこの分野の研究をより一層活性化されるものと考えられる。

(東北大 深見俊輔)