34.01

分野:
スピンエレクトロニクス、磁気物理、磁性材料
タイトル:
国際ワークショップ「SPIN CURRENTS 2007」が開催
出典:
http://www.ifcam.imr.tohoku.ac.jp/spincurrents2007/
概要:
 2007年2月19 ~ 20日、東北大学金属材料研究所において、材料科学国際フロンティアセンターおよび財団法人新世代研究所共催の国際ワークショップ「SPIN CURRENTS 2007」が開催された。国内外の研究者27名によってスピン流に関連する内容の講演がなされ、活発な討論が行われた。
本文:
 2007年2月19~20日、東北大学金属材料研究所において、材料科学国際フロンティアセンターおよび財団法人新世代研究所共催の国際ワークショップ「SPIN CURRENTS 2007」が開催された。近年注目を集めている「スピン流およびそれに関連する現象」を対象としたワークショップであり、スピン注入とスピン蓄積、半導体および金属系におけるスピンホール効果(SHE)、スピントランスファーによる磁化反転、磁壁移動、磁気渦励起、強磁性共鳴、さらには巨大トンネル磁気抵抗(TMR)効果など最新の研究が国内外の研究者27名によって講演された。

 ここ数年で実験的観測が報告され始めたSHEに関しては、非局所スピン輸送(東大物性研)やスピンポンプ(慶応大)を用いた実験報告と併せて、その理論に関する講演(Texas A&M大, 名大, および東大)がなされた。SHEおよび長年議論が続いている異常ホール効果(AHE)に関して、その起源および定式化などの理解について白熱した議論が繰り広げられた。特に、IntrinsicおよびExtrinsicなSHEの解釈については、今後も大きな課題になると感じられた。

 スピン流による磁壁移動に関しては、IBM社からナノ秒電流パルスによる磁壁移動の振動・共鳴増幅現象が報告され、また磁壁移動の理論的解釈ではスピントランスファーの非断熱過程の取扱に焦点が絞られることが多くあった。熱心な検討が行われているが、まだ統一見解には至っておらず、さらなる系統的な実験および慎重な考察の重要性を物語っている。

 その他に、スピントランスファーを利用した交流電流による磁気渦共振現象とその極性反転(京大化研)や、スピントルクダイオード効果による磁化反転電流の評価(産総研)、強磁性トンネル接合におけるノイズ解析(大阪大学)、垂直磁化配置でのスピン注入磁化反転(H.P-Nancy大)、非磁性ナノ粒子へのスピン蓄積によるTMRの発現(東北大金研)など多様なスピン流に関連する現象が報告された。

 高スピン偏極電流の発生という観点からは、Co基ホイスラー合金を用いた強磁性トンネル接合における巨大なTMRに関する報告が2件あり(ともに東北大)、またMITのグループからは超伝導体にスピン偏極電流を注入することで超伝導転移温度の変化させ、1000%を超える磁気抵抗変化が報告された。さらに、パリ南大のグループはカーボンナノチューブへのスピン注入実験から70%近いシグナルの観測に成功し、スピントランジスタの可能性が示唆された。

 「スピン流およびそれに関連する現象」として実験と理論の両面からアプローチされた本ワークショップであったが、スピン流の研究対象が金属や半導体のみならず、酸化物、超伝導体、さらには有機物へと多種に広がっている現状を強く反映した研究会であった。討論時間が若干短くはあったが、活発な討論や情報交換がなされた非常に有意義なワークショップとなった。 

(東北大学 金属材料研究所 関 剛斎)