32.02

分野:
スピンエレクトロニクス
タイトル:
MMM/Intermag 2007における分子スピントロニクス分野の講演から
出典:
日立製作所のプレスリリース
(http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2007/02/0213.html)
概要:
 1月初旬にBaltimore(USA)で行われたMMM/Intermag2007は多くの参加者を集めたが、その中で特に分子スピントロニクス分野においていくつかの講演があったのでレポートする。
本文:
 1月7日から12日までメリーランド州ボルティモアにてMMM/Intermag2007が開催され多くの参加者があった。その中で報告者が研究分野の1つとする分子スピントロニクスのセッションは最終日に開催され、いくつかの報告があったので簡単にレポートしたい。

 この分子スピントロニクス分野の草創期から研究に携わっているイタリア・ボローニャのV.A. DediuはT6分子からAlq3分子にその研究対象を広げながら、Co/Alq3/LSMO縦型スピンバルブで現れる負の磁気抵抗効果の起源を、UPSなどを用いたAlq3/LSMO界面の電子構造の研究から明らかにしようと試みている。これは関(名大)・石井(千葉大)などが精力的に行っている金属/分子界面における真空準位シフトとバンド接続に関する研究をベースにしていると言えるだろう。Dediuは講演の中で、(1)LSMO/Alq3接続においてAlq3の真空準位は-0.9 eVほどLSMOのそれと比べてズレが生じる、(2)このためAlq3のLUMOへの、LSMOからのホール注入は容易となる、(3)このAlq3のLUMOレベルあたりにCoのminority spinのDOSがあるために負の磁気抵抗が現れる、と結論している。今後の詳細な議論は待たれるが、興味をそそる話題であった。

 また近年話題の非磁性金属で分子を挟んだ場合にでも現れるいわゆるintrinsicな分子の磁気抵抗効果についてはアイントホーフェン工科大のグループから報告があり、そのオリジンについて先行研究との比較を行いながら議論を展開した。同時にこのグループはシリコンでも同様の効果が観測できることを報告し、産総研・秋永らのGaAs系における報告との類似性を指摘した。報告者ら阪大グループはC60-Co系における室温におけるスピン依存伝導の報告とルブレン-Co系における78%(4.2 K)のスピン依存伝導による磁気抵抗効果を報告した。最終日午後のセッションにもかかわらず40-50人がセッションに参加し熱心な議論が展開されるなど、徐々に分子スピントロニクスも認知されてきた、ということを印象づけた。

(大阪大学 白石誠司)