28.05

分野:
磁気物理、スピントロニクス
出典:
第30回日本応用磁気学会学術講演会(13aF-3)
タイトル:
Mn拡散を抑制した高耐熱MTJ膜の開発
概要:
 西山氏らは、従来型MRAMの実用化に必要な高耐熱MTJ膜の開発に成功したことを発表した。MRAMの実用化には、MTJ膜が素子形成時のプロセス温度に耐え得ることが必須であるが、このような高温熱処理を経ると、MR比が減少し、読出し出力が低下する問題があった。彼らは、磁化固定層にNiFeZr合金層を挿入し、Mn拡散を抑制することにより、350℃以上の耐熱性を実現、MR比の低下が起こらないことが確認された。
本文:
 MRAMの実用化にとって、MTJ膜のプロセス温度に耐性を向上させることが必須であると言われている。従来はMTJ膜に対して高温熱処理を行うと、MR比が減少し、読出し出力が低下する問題があった。読出し出力劣化の原因としては、ピン層の固着に使われている反強磁性体中のMnが、高温熱処理により磁化固定層やトンネルバリア層に拡散すること、磁化固定層とトンネルバリア層界面でのミキシングによりバリア状態が変化すること、などが挙げられている。

 東芝の西山らは、反強磁性層PtMn直上のピン層にNiFeZr合金層を挿入し、350℃のアニール後もAF結合が維持され、MR比は低下しないことを確認した。彼らの分析によると、NiFeZr中のZr原子が、磁化固定相結晶粒界に偏析し、Mn拡散を抑制していることが確認されている。

 以上のように、NiFeZr層を挿入し、350℃以上の耐熱性を示すMTJ膜を実現した。高MRのために高温熱処理が必要なMgOバリアを用いたMTJ膜にも有効であると考えられるため、今回の開発がMRAM実用化への一歩となることを期待している。 

(東芝 甲斐正)