22.01

分野:
磁気物理、スピントロニクス
出典:
http://www.almaden.ibm.com/spinaps/events/
タイトル:
スピン流研究会:「金属と半導体における最近の発展」が開催された
概要:
 2006年3月17日~19日、米国San Jose, IBM アルマデン研究所でSpinAps主催のスピン流研究会が開催された。実験・理論19件の講演のほか、多数のポスター発表において、スピントロニクス研究の最新成果が報告され、活発な討論が行われた。
本文:
 2006年3月17日~19日、米国San Jose, IBM アルマデン研究所でSpinAps主催Spin currents: A workshop on the latest development in spin currents in metals and semiconductors が開催された。SpinApsは、IBMアルマデン研究所とスタンフォード大が、新しいナノテクノロジー分野であるスピントロニクス研究に共同で取り組むことを目的に、2004年4月に開設した研究機関である。今回の研究会では、IBM社、およびスタンフォード大をはじめ各国のスピントロニクス研究者による最新の成果が発表され、活発な討論が行われた。

 講演では、スピントロニクスの中心概念であるスピン流を核として、磁壁の電流駆動、スピン移行トルク、磁気渦・スピン波の運動、スピンホール効果、スピン注入磁化反転、強磁性トンネル接合、非局所スピン輸送などのトピックスが、実験および理論の両面から取り上げられた。なかでも半数近い講演で言及された磁壁の電流駆動に関しては、白熱した議論が交わされた。

 論点となったのは、磁壁の並進運動に伴う緩和機構、およびスピン移行の断熱過程からのずれ(いわゆるβ項)の寄与に関した事柄である。ここ数年、検討が重ねられてきたが、いまだ完全な合意にいたっていない。マイクロマグネティクスによる数値解析も、採用したモデルに依存するため、本質的な理解には物理の基本原理に立ち返った、より慎重な考察が不可欠である。

 実験家サイドから、近年、相次いで重要な実験を論文発表したコンスタンツ大のグループが、電流印加後の磁壁の構造変化、およびスピン移行効率の温度依存性を報告し、絶対零度の理論予測とこれまで行われた室温での実験結果の相違が部分的に説明できるとした。有限温度の解析は理論面での課題となっていると共に、更に系統的な実験が望まれる。スタンフォード大を中心とした共同研究では、X線を用いた磁化ダイナミクスの観測をしており、現在までにナノサイズ、200psの分解能を実現している。この手法は、既存の磁気力顕微鏡(MFM)像や磁壁抵抗測定に加え、磁壁運動の強力なプローブとして今後ますます重要となってくるであろう。

 ポスター講演も多数行われた。とりわけIBM社、シーゲイト社、UCリバーサイド社などの企業からの参加者が目を引いた。主催者の周到な準備が功を奏し、十分な討論時間のもと、研究者たちは存分に情報を交換し、議論を積み重ね、大変有意義な研究会となった。 

(東北大学 金属材料研究所 家田淳一)