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11.02(Intermag2005(講演番号BA-01))

タイトル:
MTJ素子のスピン注入磁化反転電流がかなり下がってきた。
概要:
 GrandisのHuaiらは低抵抗TMR素子を用いたスピン注入磁化反転を報告した。フリー層がCoFeB単層の場合に比べ、フリー層の上部にスピンフィルタ層を加えた場合には、反転電流が約1/3の2.2×106 A/cm2まで小さくなることを報告した。MRAMの書込み電力低減化技術として期待される。
本文:
 GrandisのHuaiら(講演番号BA-01)は、アルミナバリアの低抵抗TMR素子(MR 15から30%、RA 10から30Ωμm2)を用いたスピン注入磁化反転について、反転電流(Ic)の分布の向上と、2重スピンフィルター構造によるIcの低減について報告した。
 CoFeBをフリー層に用いたMTJ膜(bottom-lead/Ta5/PtMn20/CoFe2/Ru0.8/CoFeB3/AlOx/CoFeB3/Ta50)(単位はnm)を、エッチバック法により220×170nmの接合に加工し、Icの再現性を調べたところ、Ic約1mAでのばらつき(σ/Ic_ave)は3%であった。また、この素子における熱安定係数(KuV/kBT)は65であり、この値は0.4 Icでデータを読み出しても、十分低いエラーレート(10-12以下)が得られること、また室温でデータを10年以上保持できることに対応する。
Icを下げる試みについては、上記と同様のMTJ膜(bottom-lead/Ta5/PtMn20/CoFe2/ Ru0.7/CoFeB2/AlOx/CoFeB2.5/Ta3)と、フリー層の上部にスピンフィルタを加えたDSF(2重スピンフィルター)構造にした膜(bottom-lead/Ta5/PtMn20/CoFe2/Ru0.8/CoFeB3/AlOx/CoFeB2.5/spacer/CoFe2/PtMn15/Ta5)を同様の形状に加工し、Icの比較を行った。DSF膜のスペーサー層には5nmのCuとその上にアルミナのナノオキサイド層をつけたものが用いられた。(DSF膜の構成については最適化した構造と発表され、フリー層がCoFeB 2.5 nmである以外は異なる可能性がある。)
接合の大きさはMTJ素子が130×170 nm、DSF素子が90×140 nmで、電流パルス幅30 msecにおける、Icはそれぞれ0.75 mAと0.13 mAであった。この値は4.3×106 A/cm2、1.3×106 A/cm2 に対応する。また、電流パルス幅依存性から見積もったパルス幅1nsにおけるIcは7.0×106 A/cm2、2.2×106 A/cm2となる。結果として、フリー層の上部にスピンフィルタを加えた2重スピンフィルター構造にすることによって、反転電流を1/3にすることが出来ることが報告された。

(産総研 福島 章雄)