2.05

2.05 最近の国際会議から:MML’04

TMR効果における波動関数の対称性の重要性(MML’04)

  産総研の長浜により、TMR効果における波動関数の対称性の役割についての報告が行われた(3日目招待講演:Spin-Polarized Resonant Tunneling for Various Magnetic Electrodes)。
  コヒーレントなトンネリングの場合、波動関数の対称性がトンネル素子の伝導に大きな影響を与える。長浜らは単結晶電極を持つTMR素子を作製し、磁気伝導特性を調べた。Cu(001)挿入層をもつTMR素子はバルクCuのバンド構造を反映したTMR効果(量子井戸振動)を示し、Cr(001)挿入層を持つTMR素子は界面第1層の電子状態によりTMR効果が支配されていることがわかった。この違いは、Δ1と呼ばれる対称性を持ったバンドの有無に起因するもので、トンネル電子はΔ1バンドを主に伝導することがわかった。このようなバンド効果を利用するためには、従来のアモルファスAlOバリアは向いておらず、MgO等の単結晶バリアを用いることが重要であると報告した。一例として、最近産総研により報告されたFe(001)/MgO(001)/Fe(001)TMR素子を紹介し、室温で88%以上のMRが得られていることを報告した。この大きなTMR比は、Fe(001)のバンド構造が交換分裂しており、Δ1バンドについては多数スピンのバンドしかフェルミレベル付近に存在しないことに起因する。
  これまで理解があいまいであったTMR効果の物理を、高品質な試料を作製することにより明らかにしたことは特筆すべきことであり、さらに、単結晶バリアを用いることによりこれまで最適であると考えられてきたAlOバリアを大きく超えるTMR効果を実現している。MRAMの高性能化や新スピントロニクスデバイス設計の指針となりえる結果といえる。

(産総研 安藤 功兒)