198.01

【分野】磁性材料

【タイトル】磁化サイクルを繰り返しても劣化しない磁気冷凍材料を開発

【出典】
・X. Tang, H. Sepehri-Amin, N. Terada, A. Martin-Cid, I. Kurniawan, S. Kobayashi, Y. Kotani, H. Takeya, J. Lai, Y. Matsushita, T. Ohkubo, Y. Miura, T. Nakamura, K. Hono, “Magnetic refrigeration material operating at a full temperature range required for hydrogen liquefaction”, Nature Communications (2022)
・https://www.nature.com/articles/s41467-022-29340-2
・https://www.nims.go.jp/news/press/2022/04/202204011.html

【概要】
物質・材料研究機構(NIMS)は東北大学、高輝度光科学研究センターと共同で、水素の液化に必要な全温度範囲(77~20 K)に対応する新たな高効率磁気冷凍用材料として、Er(Ho)Co2系化合物を基本とした一連の合金を開発した。

【本文】
脱炭素社会に向けて水素エネルギーが大きな脚光を浴びている。普及に向けた技術課題の一つとして挙げられる液体水素製造における低コスト化を実現する技術として、磁性体の吸熱現象(外部磁場に従って整列した原子磁石の向きが磁場消失でバラバラになる際に生じる磁気エントロピーの増加分を周囲からの熱で補う現象)を利用して水素を間接的に冷却・液化する磁気冷凍技術がある。この技術により、従来の気体冷凍技術に比べ大幅に省エネルギーになり、水素液化効率を約25%(気体冷凍)から50%以上に向上させることが原理的に可能で、装置のコンパクト化につながり、大きなコストを占めている大型のコンプレッサーを使用しないため、製造コストを大幅に下げる効果が期待されている。
本研究では水素液化温度(20 K)から窒素液化温度(77 K)で、冷凍能力が非常に大きい磁性体であるEr(Ho)Co2系化合物に微量の3d遷移金属を添加することで、磁場印加・温度昇降の繰り返しに伴う構造変化による体積膨張を抑え、材料が劣化しないことが明らかとなった。さらに添加元素の種類と量を調整するだけで、大きな冷凍能力を保持したままで水素液化に必要な全温度範囲 (77~20 K) をカバーできる類似の組成・結晶構造をもった一連の材料群が開発されており、今後の大きな進展が期待される。
(岩手大学 三浦健司)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


磁気応用

前の記事

197.01
磁気物理

次の記事

199.01