127.01

分野:
磁性材料
タイトル:
Dyフリー焼結磁石で保磁力2.5テスラ到達
 
出典:

高田幸生、佐藤岳、佐々木泰祐、大久保忠勝、宝野和博、加藤晃、金子裕治、「Nd リッチGa 添加NdFeB 系焼結磁石の熱処理温度による組織および保磁力の変化」、第39回日本磁気学会講演概要集 10aA-6、2015年9月10日、名古屋大学
佐々木泰祐、大久保忠勝、高田幸生、佐藤岳、加藤晃、金子裕治、宝野和博、「Nd リッチGa 添加Nd-Fe-B 磁石の微細組織解析」、第39回日本磁気学会講演概要集、10aA-7、2015年9月10日、名古屋大学; 日本金属学会2015年秋期大会講演概要集、382、2015年9月17日、九州大学
堀北雅揮、須藤翔太朗、山崎貴司、村岡亮史、中島健一朗、長谷川寛、「RE-T-M 粒界相を有する Nd-Fe-B 焼結磁石への粒界拡散の適用」、日本金属学会2015年秋期大会講演概要集、383、2015年9月17日、九州大学
三輪将史、岩佐拓郎、石山拓郎、石山 保、大川和香子、田中美知、榎戸 靖、「Dyフリー NdFeB焼結磁石の高保力焼結磁石の高保力化」、日本セラミックス協会第28回秋季シンポジウム講演予稿集、3D16、2015年9月18日、富山大学
梅田裕二、横田英明、大川和香子、田中美知、三輪将史、榎戸 靖、「DフリーNdFeB焼結磁石の構造解析と物性シミュレーション」、日本セラミックス協会第28回秋季シンポジウム講演予稿集、3D17、2015年9月18日、富山大学

概要:
焼結磁石の組成をNdリッチ、Gaその他元素の添加量増加とすることにより、主相粒子間の粒界相の厚みを増すとともに常磁性化することによりDyフリーで高保磁力2.5テスラを達成する技術と、高保磁力化の要因解析の結果が相次いで報告された。
本文:

ネオジム焼結磁石の主相間に厚さ数nmで存在する粒界相が強磁性を有し、粒子間を交換結合により磁気的につないでいることが近年明確になったことから、粒子間粒界相の組成をNdリッチFeプアに調整できればさらに高保磁力化が可能と期待されていた。2015年秋に国内で開催された学術講演会で、物質・材料研究機構(NIMS)と㈱豊田中央研究所の共同研究チーム、および、TDK㈱の研究チームがそれぞれ、磁石の組成をややNdリッチにするとともにM=Ga, Al, Cuなどを添加し、さらに、480℃から700℃の範囲で熱処理すると、1.7テスラ以上の高保磁力が得られ、Nd濃度が90%前後に達する厚み数10nmの粒界相が主相粒子間に生成し、結晶粒径の微細化と併用すればDyフリー組成でも最大2.5テスラに達する高保磁力が得られることを、相次いで報告した。NIMSと豊田中研のチームが解析した試料の組成は(Fe-24.6Nd-7.87Pr-0.85B-0.13Cu-0.92Co-0.35Al-0.53Ga (mass%)で、希土類元素濃度は約32.5mass%、Cu, Al, Ga添加量の合計も1%と、やや多い。上記の温度範囲で熱処理した試料には希土類とFe+M元素濃度の比が6:14の金属相が生成するとともに、Ia3構造の金属Nd相、Nd酸化物相などが存在した。高保磁力発現の主な理由は粒界相の磁化が大幅低減したことによると考えられた。
希土類対遷移金属元素比が6:14の相はNd6Fel3Si構造のNd6Fe13M正方相(例えば、K. G. Knoch他、J. Appl. Phys. 73, 5878 (1993))であると考えられるが、結晶構造の明確化と共にその生成理由を熱力学的に解明し、さらなる組織制御に役立てることが今後の課題の一つである。合金組成と熱処理を適正化することにより、結晶粒界相生成時の相平衡を従来とは異なる領域に持っていくことができることを示した研究成果であり、今後、多元系の熱力学平衡に関する理解をさらに深めることにより、Dyフリー焼結磁石の高保磁力化がさらに進展することが期待される。

(国立研究開発法人 物質・材料研究機構 元素戦略磁性材料研究拠点 広沢 哲)