136.01

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【分野】磁性材料

【タイトル】中性子小角散乱法による永久磁石材料の内部磁気構造の定量評価手法に進展

【出典】
T. Ueno et al., Sci. Rep. 6, 28167 (2016)
物質・材料研究機構プレスリリース (2016年6月30日)
URL:http://www.nims.go.jp/news/press/2016/06/201606300.html

【概要】
国立研究開発法人物質・材料研究機構 (NIMS) 磁性・スピントロニクス材料研究拠点 元素戦略磁性材料研究拠点 (ESICMM) の上野哲朗NIMSポスドク研究員と大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 (KEK) 物質構造科学研究所の小野寛太准教授を中心とする研究チームは、中性子ビームを用いて永久磁石材料の内部磁気構造を定量評価する手法を開発した。今後、本手法を様々な永久磁石材料に適用することで、材料内部の磁気構造と磁気特性の関連を詳細に検討することが可能になり、永久磁石材料の高性能化へ向けた研究開発の加速化が期待できる。

【本文】
国立研究開発法人物質・材料研究機構 (NIMS) 磁性・スピントロニクス材料研究拠点 元素戦略磁性材料研究拠点 (ESICMM) の上野哲朗NIMSポスドク研究員と大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 (KEK) 物質構造科学研究所の小野寛太准教授を中心とする研究チームは、中性子ビームを用いて永久磁石材料の内部磁気構造を定量評価する手法を開発した。
ネオジム磁石に代表される永久磁石では、応用上保磁力が重要な値である。この保磁力は、磁石の内部構造に強く影響を受けていることが知られており、磁区構造観察と微細組織を同時に取得する方法によって局所的な知見が得られている。一方で、厚さが1mmを超えるバルク試料全体の平均情報を評価することを目的として、構造と磁気スピンの両方の情報を得ることができる中性子をプローブとした解析手法が、TEMなどで得られる局所情報に対する相補的手法として期待されていた。しかし、これまで中性子小角散乱を利用した研究が行われてきたものの、データの解釈が難しく、定量評価には至っていなかった。
今回上野らは、Nd–Fe–Bナノ結晶磁石試料の厚さと中性子ビームの波長を系統的に変えた実験を行い、試料が厚く波長が長いほど中性子が顕著に散乱されることを明らかにした。この結果をもとに、観測した中性子小角散乱強度から多重散乱の影響を排除して解析したところ、材料内部の磁気構造を定量評価することに成功し、手法として確立した。この手法は、中性子小角散乱を用いた永久磁石の構造解析のための強力な指針となるものと思われ、今後の研究の基礎をなすものと期待される。

(大同特殊鋼 秋屋貴博)