132.02

【分野】磁性材料

【タイトル】硬X線走査型顕微鏡によるネオジム焼結磁石の逆磁区発生過程の観察

【出典】
Acta Materialia 106 (2016) 155-161, Magnetic domain evolution in Nd-Fe-B:Cu sintered magnet visualized by scanning hard X-ray microscope, Motohiro Suzuki, Akira Yasui, Yoshinori Kotani, Naruki Tsuji, Tetsuya Nakamura, Satoshi Hirosawa
ESICMMホームページ: http://www.nims.go.jp/ESICMM/research/paper/index-p.html

【概要】
JASRI/SPring-8のグループは硬X線ナノビーム走査型XMCD顕微鏡をネオジム焼結磁石の磁区構造観察に適用した。ネオジム焼結磁石の減磁曲線に沿った逆磁区の生成および伝播過程を外部磁場印加下で観察し、磁化反転の引き金となる逆磁区構造が特定の主相粒子に生成されることを明らかにした。

【本文】
元素戦略磁性材料研究拠点(ESICMM)に参画する高輝度光科学研究センター(JASRI/SPring-8)のグループにより、X線ナノビーム走査型XMCD顕微鏡によるネオジム磁石の磁化反転過程のその場観察が行われた。本手法では、±1750 kA/mの外部磁場を印加しながら250 nm の空間分解能での磁区構造の観察が可能である。元素分布と磁区構造を同視野で観察可能であり、永久磁石の組織構造と磁化反転機構との関係を詳細に調査することができる。また、従来の磁区観察法とは異なり、試料の薄板化や表面研磨などの加工を必要とせず、真空環境下で磁石試料を破断し、凹凸のある破面に対して観察が行われる。そのため、焼結磁石特有の微細組織を残したままでバルク敏感な磁区構造観察が可能である。また、観察する視野も数10ミクロンと広く、バルク磁石の平均構造の解析にも適している。
この装置を用いてCuが0.1%添加されたネオジム焼結磁石について解析が行われ、Cuの凝集部位に近接した主相粒子から逆磁区が発生する傾向が強く、それが統計的にも有意であることが明らかにされた。従来から、Nd-Fe-B焼結磁石の粒界三重点に凝集するNd-rich相が保磁力を低下させていることは推測されてきたが、Cuが凝集している部分が一因となっていることは今回初めて明らかとなった。今のところCuがどのように逆磁区の発生に影響しているかは議論の余地があるが、ネオジム磁石の保磁力メカニズムを理解する上で重要な情報である。また、Dyを粒界拡散させたネオジム磁石の解析を行うことで、主相表面のDy分布と逆磁区の発生・成長の様子の詳細を直接観察できると考えられ、今後さらに磁化反転機構の理解が進むものと期待される。

(大同特殊鋼 秋屋貴博)