99.02

分野:
磁性材料
タイトル:
TMS2013会議で米国の磁石開発プロジェクトARPA-REACTと日本および欧州の研究成果が対比
出典:
TMS2013 Final Technical Program、ホームページ掲載のAbstracts
 
 
概要:
 2013年3月4日~6日にテキサス州サンアントニオで開催されたMineral, Metals and Materials Society (TMS)の年次定期大会が開催され、シンポジウム「Magnetic Materials for Energy Applications ?III」でARPA-REACTに参画している米国研究者がアルニコ磁石なども含むは希土類磁石について報告した一方、日本と欧州からはNd-Fe-B焼結磁石の粒界構造および2粒子間の薄いフィルム状粒界相の磁性に関する報告があり、米国とのプロジェクトテーマの差異が明瞭に示された。
 
 
本文:
 2013年3月4日~6日にテキサス州サンアントニオで開催されたMineral, Metals and Materials Society (TMS)の年次定期大会が開催され、シンポジウム「Magnetic Materials for Energy Applications ?III」では、現在米国で推進されているARPA-Eイニシアティブのプロジェクト「Rare Earth Alternatives in Critical Technologies (REACT)」(http://arpa-e.energy.gov/?q=arpa-e-site-page/view-programs)に参画している研究者から、いくつかの発表があった。REACTプロジェクトの目標の一つは180℃で10-20MGOeの性能を示す非希土類磁石を開発することにあり、アルニコ磁石、Mn-Al-C磁石などにも再度最先端分析装置を用いた研究対象とするなど意欲的な取り組みをしている。Northeastern大学のLaura H. Lewis教授はAg-Mnなどの急冷コンポジット合金が示す交換異方性が10Kで10kOeであることを示したほか、NWA6259と命名されている隕石から取り出したほぼ純粋なL10-FeNi 相の物性値を報告した。ドイツ固体物質研究所(IFW-Dresden)のThomas G Woodcock博士は収差補正STEMを用いてNd-Fe-B焼結磁石中のNd2Fe14B/Nd2O3界面の原子配列を解析した。日本からは高輝度光科学センターの中村哲也博士が軟X線を用いて超高真空中で破断したNd-Fe-B焼結磁石の破断面のXMCDを測定し、2粒子間の厚さ約2nmの薄い粒界相が強磁性体であることを強く示唆する結果を報告して注目された。米国と日本および欧州の磁石プロジェクトにおける取組の互いが対照的に表れたシンポジウムとなり、それぞれの地域の磁石産業界のニーズを反映した結果と思われた。

((独)物質・材料研究機構 元素戦略磁性材料研究拠点 広沢 哲)

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