87.02

分野:
磁性材料
タイトル:
Nd2Fe14B単結晶微粒子薄膜試料で2.4MA/m級高保磁力実現相次ぐ
出典:
W.B. Cui, Y.K. Takahashi, K. Hono, Acta Materialia 59 (2011) 7768–7775
日本金属学会2011年秋期大会概要集(CD-ROM)講演番号85(小池ら)、134(鈴木ら)
 
 
概要:
 スパッタ蒸着法で作製されたNd2Fe14B単結晶微粒子系の薄膜試料において、国内の複数の研究グループが2.3MA/m級の高保磁力を達成し、Dyを用いないNd-Fe-B系磁石材料でも結晶粒の微細化と磁気的孤立化を実現すればHEV/EV環境クラスの耐熱性を有する磁石材料が可能なことを示した。
 
 
本文:
 物質・材料研究機構のCuiらはNd-Fe-B微結晶で構成される垂直磁気異方性スパッタ薄膜Nd15Fe75B10(80nm)にさらにNd(20nm)/Cu(3nm)あるいはNd(20nm)/Ag(3nm)層を蒸着し、熱処理を施すことによって2.35MA/mの保磁力を発現させることに成功した。この薄膜は保磁力の温度依存性が焼結法で作製したバルク磁石よりも小さく、200℃で0.979MA/mを保持した。
 東北学院大工の嶋研究室は、MgO(100)単結晶基板/ Mo (20 nm)/[Nd-Fe-B (6 nm)/ Nd-Cu (0.25 nm)]2 / Mo (10 nm)多層膜をNd-Fe-B 層とNd-Cu層は成膜時の基板温度を室温から600 ºC まで変化させて成膜した後、400~650 ºC、1hr の熱処理を行うという手順で作製したところ、成膜温度500ºC において膜面垂直の保磁力は最大値である2.32MA/m を示した。また、山形大(および東北大NICHe)の小池らのチームは、Nd2Fe14B孤立微粒子単結晶をMgO単結晶基板上にMoバッファ膜を介して成長させた薄膜において、Nd堆積後500℃で熱処理することにより、保磁力約2.1MA/mを得た。
 これらの薄膜モデル磁石を用いた研究はNd2Fe14B三元化合物で結晶表面あるいは結晶粒界を制御することに成功すれば2.4MA/m級の高保磁力が得られることをそれぞれ独立の研究で示し、特にCuiらの研究は保磁力の温度依存性も従来の異方性Nd-Dy-Fe-B系焼結磁石よりも小さくなる場合があることを示した点で意義が高い。これらの研究に刺激されて、高温での使用に耐えるDyフリー永久磁石の研究開発にさらに多方面からの研究者が参画することが期待される。

(日立金属(株)NEOMAXカンパニー磁性材料研究所 広沢 哲)