118.01

分野:
磁性材料
タイトル:
反強磁性体による圧力熱量効果の発見
出典:
Daichi Matsunami, Asaya Fujita, Koshi Takenaka and Mika Kano, “Giant barocaloric effect enhanced by the frustration of the antiferromagnetic phase in Mn3GaN,” Nature Materials (2014) doi:10.1038/nmat4117
東北大学工学研究科、産業技術総合研究所 プレスリリース「圧力を使って磁性材料の吸熱・放熱を室温で制御-フロン類が不要な冷凍技術の開発に新展開-」、2014年10月27日
http://www.eng.tohoku.ac.jp/news/news1/detail-,-id,274.html
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2014/pr20141027/pr20141027.html
 
 
概要:
 
国立大学法人 東北大学工学研究科 藤田麻哉准教授(現:独立行政法人 産業技術総合研究所 グリーン磁性材料研究センター 材料解析・開発チーム 研究チーム長)と名古屋大学工学研究科 竹中康司教授のグループは、Mn3GaN反強磁性体に室温付近で139 MPaの静水圧を印加することで22.3 J/kg-Kものエントロピー変化を生じること、また、この際のエントロピー変化の増幅は、反強磁性体の磁気構造に由来するフラストレーションの効果であることを発見した。
 
 
本文:
物質に磁場を印加することで一次の相転移を誘起させ、磁気構造が変化することで生じる熱量変化を冷凍技術に応用する研究が注目されている。これまでは、Gd5Si2Ge2,La(Fe,Si)13Hy, MnAs, Ni基ホイスラー合金のように、常磁性から強磁性への一次の相転移を磁場で誘起させることで熱量の変化を得ていた(磁気熱量効果)。今回、東北大学工学研究科(現:独立行政法人 産業技術総合研究所 グリーン磁性材料研究センター)藤田麻哉准教授と名古屋大学工学研究科 竹中康司教授のグループは、Mn3GaNに圧力を印加することで反強磁性から常磁性への一次の相転移が誘起され、139 MPaの静水圧化で22.3 J/kg-Kもの大きなエントロピー変化が生じることを発見した。反強磁性から常磁性へ一次の相転移を生じる物質は他にも例はあるが、転移の際の体積変化が小さく、圧力によって相転移を誘起させるには巨大な圧力が必要であったり、また、相転移が生じてもこのように大きな熱量変化は得られない。Mn3GaNの場合、三角格子の頂点に比較的大きなMnの磁気モーメントが位置し、格子を広げることで反強磁性的磁気秩序が維持されているのに対し、常磁性状態ではフラストレーションにより磁気状態が不安定化し、両相の間に約1%もの大きな体積変化が存在していることが重要な点である。つまり、Mn3GaNにおけるMnの幾何学的に特殊な原子配置が相転移に伴う大きなエントロピー変化を増幅している、と解釈される。試料に圧力を印加して相転移を誘起させた状態から圧力を除荷した際の試料の温度も直接測定されており、実際に逆変態によって試料の温度が変化することも確認された。
現在の冷凍技術では冷媒としてフロン類ガスを使用しており、オゾン層破壊による地球温暖化が非常に大きな問題になっていることから、磁気冷凍などの固体冷凍技術の開発が急がれている。磁場への反応が小さいために開発の対象とされていなかった反強磁性体から熱変化を取り出す新しい技術として、今後の研究の進展が大いに期待される。

(東北大学 金属材料研究所 梅津理恵)