69.02

分野:
磁性材料
タイトル:
Fe16N2 40年来のミステリーを解明か?
出典:
“Fabrication and New Findings of Fe16N2 and Its Origin of Giant Saturation Magnetization” Jian-Ping WANG, Nian JI, Xiaoqi LIU, Cecilia SANCHEZ-HANKE
Paper for PMRC2010_18pA-6 (2010).
 
 
概要:
 垂直磁気記録会議PMRC2010において、ミネソタ大のグループが、巨大磁気モーメントを持つとされる窒化鉄(α”-Fe16N2)の40年間のミステリーを解明したと発表した。
 
 
本文:
 ミネソタ大のグループは、対向型スパッタ法を用いて窒素雰囲気中で非常にゆっくりと鉄薄膜を形成することにより、Fe8Nのなかに30%程度のFe16N2の形成に成功した。さらにX-ray magnetic circular dichroism(XMCD)法による3d電子状態の測定により、窒素原子を取り囲むFe原子の8面体の中に3d電子が局在するモデルを提案し、第一原理計算から巨大磁気モーメントが説明できることを示した。鉄の窒化によって巨大磁気モーメントが発現する可能性を最初に示したのは、K. T. Kim and M. Takahashi である。彼らは、窒素雰囲気中で形成された窒化鉄の薄膜中に含まれるFe16N2が、スレータポーリング曲線の限界をはるかに超える磁気モーメントを持つ可能性があることを1972年に報告した。1990年台に入り、Y. Sugita, H.Takahashi, M. Komuro, K. Mitsuoka, and A. Sakumaの日立グループより、MBE技術によるα”-Fe16N2薄膜の単結晶化が精力的に行われ、室温においても2.8μBを超える磁化が発現していることを確認した。ところが、薄膜作製条件が極めて厳しく、多大の努力にもかかわらず他の研究機関による巨大磁気モーメントの再現実験が十分に行われなかった。また、理論的な発現機構の解明にも至らなかったため、その後研究が中断状態にあった。近年、CoFe合金がわずかではあるがスレータポーリング曲線の限界を超える(2.45T)ことが明らかになり、スレータポーリング曲線の物理限界としての根拠が揺らぎつつある点、HDDの記録密度の伸び率鈍化の大きな要因が書込み磁極材料の飽和磁化の物理限界にあるとされている点、が背景にある。本成果により、スレータポーリング曲線の限界は、ある限定された状況においてのみ成立ことが示唆される。再度Fe16N2の研究が活性化されること、HDDの書込み磁極材料の飽和磁化増大の検討が進められることが望まれる。

(日立製作所 五十嵐万壽和)