39.01

分野:
ハード磁性材料
タイトル:
省庁連携「稀少元素代替」「元素戦略」プロジェクトで磁石材料関連提案2件が採択
出典:
文部科学省ホームページ「文部科学省「元素戦略プロジェクト」及び経済産業省「希少金属代替材料開発プロジェクト」研究開発課題の採択について」
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/19/07/07071217.htm
 
 
概要:
 高機能材料に必須とされる種々の稀少元素の資源枯渇に対する国家的対策の一環として経済産業省と文部科学省が連携して公募した2つのプロジェクトの採択結果が公表され、合計12件の採択課題のうち、磁石材料関連で希土類資源使用量削減を目的とした2件が採択された。
 
 
本文:
 文部科学省の「元素戦略プロジェクト」は物質・材料を構成し、その機能・特性を決定する元素の役割・性格を研究し、物質・材料の機能・特性の発現機構を明らかにすることで、希少元素や有害元素を使うことなく、高い機能をもった物質・材料を開発することを目的とし、豊富で無害な元素による代替材料の研究、戦略元素の有効機能の高度活用、元素有効利用のための実用材料設計技術、という3つの切り口で提案を公募した。経済産業省の「希少金属代替材料開発プロジェクト」では、特に供給リスクの高い透明電極向けインジウム、希土類磁石向けディスプロシウム、超硬工具向けタングステンを対象として、5年後の実用化を目指す研究提案を公募した。「元素戦略プロジェクト」で7件、「希少金属代替材料開発プロジェクト」で5件が採択され、磁石材料関係で希土類磁石のディスプロシウム削減および希土類元素の使用量削減を目指す2件が採択された。

 「元素戦略」での「低希土類元素組成高性能異方性ナノコンポジット磁石の開発」(代表機関:日立金属(株)、参画機関:名古屋工業大学、九州工業大学、(独)物質・材料研究機構)では「飽和磁束密度の高い軟磁性相と保磁力の高い硬質磁性相をコンポジット化した高性能異方性ナノコンポジット磁石を開発し、サブミクロンサイズ微結晶粒の磁化容易方向の揃った微結晶組織による異方性ナノコンポジット磁石を試作する」ことを目標としている。「稀少元素代替」の「希土類磁石向けディスプロシウム使用量低減技術開発」(採択事業者:東北大学、山形大学、(独)物質・材料研究機構、(独)日本原子力研究開発機構、(株)三徳、インターメタリックス(株)、TDK(株))では、「Nd-Fe-B 結晶粒の微細化・原料粉末最適化技術、界面ナノ構造制御技術(強磁場プロセス、薄膜プロセス、組織制御等)を開発する。また、界面ナノ構造や磁化過程の詳細な解析や計算科学により、高保磁力化のための指導原理を獲得する。」としている。

 これらのプロジェクトではNd-Fe-B系磁石材料の保磁力を高める新規な手段を見出すことが重要視されており、今後、これらのプロジェクトによりこの分野の研究が組織解析技術および理論面で活性化されることにより、新規な磁石材料およびプロセスが創生される可能性が高まるとが待されている。

(日立金属(株) 磁性材料研究所 広沢 哲)

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