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15.01(電波新聞2005年7月13日)

分野:
ハード磁気材料
タイトル:
超高性能磁石研究開発の現状
概要:
 焼結Nd2Fe14B系磁石の最高記録 (BH )max = 474 kJ/m3 (59.5 MGOe)が2005年7月にNEOMAX社から公表された。また、物材研はSm(Co-Cu)5/Feの異方性ナノコンポジット磁石で255 kJ/m3 (32 MGOe)の(BH )maxを得ている。磁石材料の性能限界を極める研究開発はまだ理論的可能性を残しており、今後も重要な研究分野であることは間違いない。
本文:
 デイトン大学は最大磁気エネルギー積(BH )max = 410 kJ/m3(51.5MGOe)のNd2Fe14B/Fe系ナノコンポジット・バルク磁石の作製に成功したことを同大学のホームページに公表している[1]。この値は1993年にSkomskiとCoey[2]によって提唱された「巨大磁気エネルギー積ナノ構造2相磁石」のコンセプトに基く磁石材料としては現時点での最高記録である。2004年夏にフランスのAnnecyで開催されたHigh Performance Permanent Magnets and Their Applications (HPMA2004)での発表[3]によれば、デイトン大学のチームが採用したプロセスは、超急冷で得られるNd2Fe14B系アモルファスフレークを高周波加熱により極短時間で真空中ホットプレスし、さらに熱間塑性加工を施すものである。しかし,ここで得られた(BH )maxの値はSkomskiらが理論限界として見積もった巨大磁気エネルギー積1MJ/m3と比較するとまだ低い。他方、ナノコンポジットではない「単相系」では、熱間塑性加工法による異方性ナノ結晶バルク磁石の記録としては、Nd2Fe14BよりややNd過剰な組成により1998年に千葉工大の斉藤等[4]がアモルファス粉末を加圧焼結後熱間塑性加工して得た異方性バルク磁石の433 kJ/m3(54.4MGOe)が最高と考えられる。また、Nd2Fe14Bベースの異方性磁石の現在の最高記録はNEOMAX社が2005年7月に公表した焼結Nd2Fe14B系磁石の(BH )max = 474 kJ/m3 (59.5 MGOe)である[5]。

 ナノコンポジット磁石の(BH )maxがなかなか理論値に近づかない現状に対して、物質・材料研究機構の宝野ディレクタ等のグループは、多層薄膜の熱処理により、Sm(Co-Cu)5/Feの異方性ナノコンポジット磁石を作製して255 kJ/m3 (32 MGOe)の(BH )maxを得た[6]。この値はSmCo5 単相磁石の理論限界値229 kJ/m3を超えており、異方性ナノコンポジット磁石がそれを構成するハード磁性相の単相系磁石を超える性能を獲得し得る事を実証した成果となった。

 磁石材料の性能限界を極める研究開発はまだ理論的可能性を残しており、今後も重要な研究分野であることは間違いない。 

(株式会社NEOMAX 広沢 哲)
参考文献:
[1] http://www.udri.udayton.edu
[2] R. Skomski and J. M. D. Coey, Phys. Rev. B 48, 15812 (1993).
[3] D. Lee, C. H. Chen, S. Liu, and M. Q. Huang, Proc. 18th Workshop on High Performance Magnets and Their Applications, Annecy, France, 2004, p. 667.
[4] T. Saito, M. Fujita, T. Kuji, K. Fukuoka, and Y. Shono, J. Appl. Phys. 83, 6390 (1998).
[5] 電波新聞2005年7月13日
[6] J. Zhang, Y. K. Takahashi, R. Gopalan, and K. Hono, Appl. Phys. Lett. 86, 122509 (2005)