112.02

分野:
磁気応用
タイトル:
親子の被験者を同時計測可能な脳磁計システムの開発
出典:
“Hyperscanning MEG for understanding mother-child cerebral interactions”
M. Hirata, T. Ikeda, M. Kikuchi, T. Kimura, H. Hiraishi, Y. Yoshimura and M. Asada, Front. Hum. Neurosci. 8:118. doi:10.3389/fnhum.2014.00118
 
 
概要:
 並べて設置された脳磁計を利用し、母子の被験者の脳磁図を同時計測するシステムを開発した。双方の被験者の表情をカメラで捉え、コンピュータで統合した後、リアルタイムで互いの被験者に呈示するシステムである。母親の表情を呈示する事が、子どもの被験者の頭部の動きの減少や集中力の維持などに有効であることが示された。
 
 
本文:
 子どもは周囲の環境、特に親や養育者とのコミュニケーションを通じて社会性を身につけていく。子どもの社会的発達過程を解明するにあたり、その相互作用を調べることが重要である。大阪大学の平田らのグループは、同一の磁気シールドルーム内に並べて設置された2台の脳磁計を使い、母子の被験者の脳磁図を同時計測するシステムを開発した。
 脳磁計は脳波やfMRI、NIRSなど他のモダリティに比べて、電極やプローブを装着する必要が無い、非侵襲で計測できる、閉塞感が少ないなどの利点があり、子どもの脳活動計測に適した計測手法である。一方、計測中に脳磁計センサと脳の位置関係が変わると正しいデータを取得できなくなるため、被験者が頭部を動かさないようにしなければならない。子どもの被験者にとって長時間動かずに集中力を保つことは、非常に難しい事である。これまでの実験では予め選んでもらった好みのアニメを見せたり、寄り添った母親や実験者が励ましたりするなどしていたが、開発されたシステムではアニメと交互に、隣にいる母親や子どもの表情をリアルタイムで画面に表示する事で被験者の頭部の動きが治まり、集中力を保持できるようになったと説明がなされている。
 新たに開発されたシステムは被験者の顔を撮影するCCDカメラと、画像処理をするソフトウェア、プロジェクタと鏡を用いた画像呈示システムである。画像呈示までの遅延時間は150 ms であり、視聴覚のずれとして無視できるほどの大きさであることが確認された。
 本装置は母子間だけでなく大人間での同時脳磁図計測にも応用可能であり、互いの顔の表情が与える心理的な影響なども調べることができるだろうとの展望が述べられている。本装置を用いたヒトとヒトの相互作用における脳活動の解明に期待したい。

(金沢工大 小山大介)