69.01

分野:
磁気計測
タイトル:
垂直磁気異方性の発現と3d電子軌道との関係を初めて観測
出典:
“Perpendicular magnetic anisotropy in Co/Pt multilayers studied from a view point of anisotropy of magnetic Compton profiles,” M. Ota, M. Itou, Y. Sakura, iA. Koizumi and H. Sakurai, Applied Physics Letters, 2010年4月12日オンライン版
参考ホームページ:
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2010/100412
概要:
 群馬大学、高輝度光科学研究センター、兵庫県立大学は、大型放射光施設SPring-8を用いて、Co系人工格子膜の垂直磁気異方性の発現と3d電子軌道との関係観測に世界で初めて成功した。
本文:
群馬大学、高輝度光科学研究センター、兵庫県立大学のグループは、[Co/Pt]n、[Co/Pd]n人工格子膜における垂直磁気異方性の発現と磁性を担うCo3d電子軌道との関係を、大型放射光施設SPring-8の高強度高エネルギー円偏光X線を用いた磁気コンプトン散乱測定により世界で初めて観測した。磁気コンプトン散乱は電子運動量密度分布を測定することができるため、磁性を担う3d電子の各波動関数の電子密度が定量的に測定可能な実験手法である。研究グループは, [Co/Pt]n、[Co/Pd]n人工格子膜における垂直磁気異方性が膜厚の構成によって大きく変わる点に着目し、Co層の厚みを0.8 nmに固定、PtまたはPd層の厚さを変えた試料を系統的に測定、Coの格子定数、垂直磁気異方性、および3d電子の各波動関数の電子密度の関係を詳細に検討した。その結果、垂直磁気異方性の発現は、理論予測どおりに磁気量子数|m|=2の電子軌道が大きく影響することが実証されたとともに、垂直磁気異方性の小さな試料においては、磁気量子数|m|=1の電子軌道も影響することを見出した。磁気記録の高密度化においては、磁化情報をナノサイズの微小領域に閉じ込める必要があるため、より大きな磁気異方性材料の開発が必要となっている。本研究の成果は、こういった磁気記録媒体開発の大きな指針となることが期待される。また、今回利用した磁気コンプトン散乱実験は、磁性を担う電子の軌道を調べることができるため、不明とされてきている磁気現象の解明やこれに基づく新磁性材料の開発、デバイスの創生といった波及効果も大きいと考えられる。 

(日立製作所 五十嵐万壽和)