66.01

分野:
磁気応用(生体磁気)
タイトル:
信号と雑音を左右別々の耳から呈示したときに見られた聴覚システム中の確率共鳴現象
出典:
‘Stochastic resonance within auditory system observed when signal and noise were delivered to the opposite ears’, Keita Tanaka, Yoshinori Uchikawa, Masaki Kawakatsu, Iku Nemoto, IEEJ Transactions on Electrical and Electronic Engineering, 5-1, 73-78 (2010)
概要:
 本研究は,聴覚システムにおける確率共鳴現象の発生部位を特定するために,左耳からAM変調音,右耳から雑音により刺激した.その結果,右側頭部の脳磁界聴性定常応答に確率共鳴現象が確認された.この結果は,両方の音が混ざり合う中枢神経系において,その現象が見られたことを示唆する.
本文:
 先行研究において,ヒトの聴覚野の脳磁界反応(聴性定常応答)において確率共鳴現象が見られたことを報告した.ここで確率共鳴現象とは,信号に雑音(ノイズ)を加える事で,ある確率の元で,信号が強まり,反応が向上する現象である.しかし聴覚システムにおいて,確率共鳴現象が発生した場所は不明である.そこで本研究は,左耳からAM変調音,右耳から雑音により刺激し,確率共鳴現象の発生部位の特定を試みた.
本研究では聴覚刺激音として,AM変調音(搬送波周波数1kHz,変調周波数40Hz)を刺激音強度40dBSLで持続的に呈示し,雑音として白色雑音を,その雑音の強度を6段階変化させたときに得られた脳磁界聴性定常応答の40Hz成分のパワーと位相コヒーレンス(位相同期)を調べた.
その結果,5人のグループ統計解析において,聴性定常応答の位相同期の結果に有意な雑音の効果(確率共鳴現象)が見られた.この結果は,AM変調音のみ(雑音無しの状態)より,AM変調音と同時に弱い雑音を呈示したほうが,聴性定常応答の刺激に対する位相同期が増加することを意味する.このことは,左右別々の耳に呈示した音(AM変調音と白色雑音)の情報が混ざり合う脳の中枢神経系において,その現象が見られたことを示唆する.また信号音に微弱な雑音を混入することで,脳反応を増幅できる可能性を示す.

(東京電機大学 田中慶太)