61.01

分野:
磁気応用
タイトル:
パルス/CWレーザーを用いた光電子顕微鏡(PEEM)による磁気円二色性イメージング
出典:
Journal of Physics: Condensed Matter 21 (2009) 310301
T. Nakagawa, K. Watanabe, Y. Matsumoto and T. Yokoyama, “Magnetic circular dichroism photoemission electron microscopy using laser and threshold photoemission”
概要:
分子科学研究所・中川剛志らはCWレーザーおよびフェムト秒レーザーを光源とした光電子顕微鏡(PEEM)装置を用いて磁気円二色性のイメージングに成功した。
本文:
 磁性体中にある磁区の磁化方向を直接観察する手法のひとつとして、磁気光学Kerr効果(MOKE)を利用したMOKE顕微鏡が現在広く用いられている。しかしながらその空間分解能は光の回折限界によって制限されるため、更なる空間分解能の向上には新しい観察手法が必要である。中川らは過去にレーザーを用いた光電子検出実験を行いて、レーザーの光子エネルギーが磁性薄膜の仕事関数すれすれである場合に、磁化の方向によって入射光の左・右円偏光での光電子放出量が異なるという磁気円二色性(MCD)を見出している。さらにフェムト秒パルスレーザーを用いることで二光子励起過程でも同様の磁気円二色性を観測している。今回、彼らはMOKE顕微鏡よりも高い空間分解能を有する光電子顕微鏡(PEEM)を用いてこのような磁気円二色性を観察することで、磁気イメージングや超高速磁化応答の観察を試みた。

 その結果、波長405nmのCWレーザー用い、Cu(001)単結晶基板上に成長したNi薄膜試料にCs原子を吸着させて仕事関数を変化させることで4%の大きさのMCDを持つ磁区構造の観察に成功した。同様の測定をTi:Sapphireフェムト秒レーザーを用いて行い、一光子励起(3.1eV)および二光子励起(1.55eV + 1.55eV)のいずれにおいても磁区構造観察に成功した。最後にTi:Sapphireレーザー基本波とその2倍波をそれぞれポンプ光・プローブ光とすることで、微小領域の磁化に関するフェムト秒光応答の検出にも成功した。 

(東大物性研 谷内敏之)