55.01

分野:
磁気応用
タイトル:
高速時間分解MOKE顕微鏡装置の開発
出典:
REVIEW OF SCIENTIFIC INSTRUMENTS 79,123905(2008)
概要:
 理化学研究所(埼玉県和光市)・東京大学物性研究所(千葉県柏市)の大谷義近教授研究室とネオアーク株式会社(東京都八王子市)の共同研究グループは、時間分解能35~50ps、空間分解能0.5μmオーダーの性能を有するMOKE(Magneto-Optical Kerr Effect)顕微鏡を開発した。
本文:
磁化とスピンダイナミクス、スピンエレクトロニクスに関する研究が進むにつれ、そのダイナミクスを高速時間領域かつ高空間分解能で計測することへの関心が高まっている。これらの実験には、時間分解MOKE顕微鏡、ブリリュアン光散乱、空間分解強磁性共鳴顕微鏡などが用いられるが、中でも時間分解能と空間分解能との積を性能指数とした場合に、時間分解MOKE顕微鏡は他の検証手段と比較して優れている。今回開発した時間分解μMOKE顕微鏡では、プローブにパルス光源を用いて高速現象を繰り返し時間切り出して積算・計測するストロボ法を用いた。光源には大型で高価なフェムト秒レーザに代えて青紫色半導体パルスレーザを採用することにより、高い空間分解能を確保しつつ、小型化、低価格化を実現した。

 装置の性能評価には、理研・東大グループが作製したAuのストリップライン上に幅1μmのNi-Feの長方形パターンを形成した構造の素子を用いた。ストリップラインにパルス電流を流すことにより発生するパルス磁界はNi‐Feパターンの磁化を歳差運動させる。パルス磁界を印加した時刻に対してプローブ光の発光時刻を順次遅延させながら、各時刻におけるMOKE信号を検出して時間軸上にプロットすると磁化の歳差運動による磁化の変動が観測される。実際、幅4 ns、強度80 Oeのパルス磁界を印加した際に同Ni-Feパターンに生じた磁化の歳差運動は、1.88GHzの周波数成分を持ち、およそ2.5 nsの間持続する減衰振動であった。さらに、このパターンの長手方向にバイアス磁界を印加して振動周波数の遷移を調べたところ、結果はKittelの計算式とよく一致することが確認された。(詳細は論文参照)

 同グループは、開発した装置が磁化のダイナミクス解析に有用であると考え、TR-μMOKEの製品名でネオアーク社を通じて発売を開始すると共に、応用分野の拡大には試料を高速度に磁化する種々の方法を確立することを課題として、さらなる開発研究を進めている。 

(ネオアーク株式会社 赤羽浩一)