53.02

分野:
磁気応用
タイトル:
第27回ナノバイオ磁気工学専門研究会「磁性ナノ粒子の材料設計と医療応用の最前線」
日時:
2008年9月24日(水)13:30~16:15
場所:
 東京工業大学 大岡山キャンパス
参加者:
33名
本文:
磁性ナノ粒子のバイオ医療応用に関する研究開発は活性化の一途をたどっている。γ-Fe2O3ナノ粒子をベースにしたMRI(磁気共鳴画像診断装置)造影剤は、市販製剤であり、薬事法で体内(in vivo)で使用することが承認されている唯一の磁性ナノ粒子の応用例である。今回の研究会では、MRI造影剤の研究開発に関する研究報告、並びにFe3O4やγ-Fe2O3などのフェライト系材料と比較して大きな磁化を有するFePtナノ粒子の作製と医療応用に関する研究報告、以上2件で構成した。磁気工学から材料、バイオ医療など広範な分野から研究者が集い、活発な議論が交わされた。以下に各講演の概要を示す。

1.「バイオ医療応用に向けた磁性体ナノ粒子の材料設計」  前之園 信也 (北陸先端大)
鉄エトキシド熱分解法を用いて作製したFePtナノ粒子は、分散性、粒径分布、組成分布が良好である。この合成法は、原料及び副生成物の環境負荷や毒性が低いとの利点もある。原料等の条件を変えて作製したFePtナノ粒子の構造評価と、原料の熱分解挙動の解析から、粒子生成機構を検証した。さらに、FePtナノ粒子の応用としてMRI造影剤、磁気分離、ハイパーサーミア(癌の温熱治療)などが紹介され、生体適合性評価等を経て、バイオ医療分野での実用化が期待されることが説明された。

2.「磁性流体Ferucarbotranの医薬品としての開発」  長江 英夫 (金沢大)
Ferucarbotranは磁性流体の1つとして知られているデキストラン・マグネタイトを出発材料として、人体に安全に静脈内投与でき、MRI造影剤として臨床使用できる物質として開発されたものである。このFerucarbotranの医薬用途での開発経緯、特にこれを有効成分とするMRI造影剤Resovistの開発経緯と、ハイパーサーミアへの応用研究が紹介された。Resovistの開発におけるGMP(Good Manufacturing Practice:医療機器 製造業者の製造管理および品質管理基準)への対応に関わる業務、また東海豪雨による研究所水没の復旧作業など話題提供は多岐に渡った。 

(横国大 竹村泰司)

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