105.02

分野:
磁気記録
タイトル:
CoCrPtグラニュラー膜におけるマイクロ波アシスト磁化反転
出典:
“Microwave assistance effect on magnetization switching in Co-Cr-Pt granular film”, Appl. Phys. Lett. 103, 202405 (2013).
 
 
概要:
 CoCrPt垂直磁化グラニュラー膜におけるマイクロ波アシスト磁化反転の実験を行った。20(kOe)という極めて大きな異方性磁場を持つ材料においても小さな振幅(350(Oe))を持つマイクロ波によって保磁力を最小で5.3(kOe)と著しく下げられることが示された。
 
 
本文:
 東北大学の岡本らはCoCrPt-TiO2グラニュラー膜を用いたマイクロ波アシスト磁化反転の実験を行い、保磁力とマイクロ波の照射時間の関係を調べた。磁気記録媒体の磁化反転にはこれまで異方性磁場より大きな直流磁場を記録ビットに印加するという方法が採られてきた。しかし局所的に大きな磁場を発生させることは極めて難しいため、記録密度の飛躍的な上昇に伴い異方性の高い材料の開発が進んでいる現在では新しい磁化反転手法の確立が求められている。マイクロ波アシスト磁化反転は強磁性体にマイクロ波を照射して磁化を容易軸周りに揺らすことで、異方性磁場よりも小さな直流磁場で磁化を反転させる手法であり、次世代の超高密度磁気記録素子の実現に向けて鍵と成る物理現象である。本研究では異方性磁場が20(kOe)の垂直磁化膜に350(Oe)の振幅を持つマイクロ波を照射して実験が行われた。マイクロ波の照射時間が20(ns)と2(µs)の場合の保磁力を比較すると前者の方がマイクロ波のアシストが少ない分、保磁力が大きくなるが、それでも最小で5.3(kOe)まで保磁力を下げられることが示された。また、どちらの場合にも保磁力はマイクロ波の周波数が14(GHz)の時に最小になるという興味深い結果が得られた。この保磁力を最小とするマイクロ波の大きさが照射時間に依存しないのか否かを理論的に示すことができれば磁気記録素子の設計に大きな助けとなるであろう。この点に限らず、マイクロ波アシスト磁化反転は実験・シミュレーションの成果がたくさん報告されている一方で、反転磁場を最小にするマイクロ波周波数と物質パラメーターの関係は何かなど、理論的考察がまだ十分には確立されていない問題が多く残されている。本研究を皮切りに実験研究だけでなく理論研究も盛んに行われるようなることがマイクロ波アシスト磁化反転を用いた磁気記録素子の研究開発を進める上で重要になるであろう。

(産総研 谷口知大)