58.02

分野:
磁気記録
タイトル:
第165回磁気学会研究会(第28回ナノマグネティックス専門研究会)「極限状態の磁気ストレージ(超テラビット記録への挑戦)」
概要:
  2009/3/13中央大学駿河台記念館にて開催、参加者は97名であった。HDDの大容量化に向けて超テラビットの面記録密度を達成するためには、微細加工、微小評価、高速磁化反転・観測、シミュレーション、信頼性などそれぞれにおいて、ナノメートル、ナノ秒以下を制御する究極の技術が必要とされ、研究開発が進められている。今回、各分野からご専門の方々にお集まり頂き、最近の研究成果を含めて講演して頂いた。100名近い参加者があり関心の高さが伺われた。
本文:
 豚インフルエンザの影響で、多くの人が参加できなくなったIntermag 2009において、1Tbit/in^2超HDD技術の重要な候補であるマイクロ波アシスト記録(MAMR)進展へ向けた重要な一歩となる発表が行われた(ER-14)。

1.「電子線描画法を用いた2 Tb/in2超高密度パターンドメディア形成の可能性」
○保坂純夫1、田中保成1、Z. Mohamad1、三富直彦1、Y. Yin1、近藤祐治2、有明順2 (1群馬大 、2秋田県産業技術総合研究センター)
 30 keV電子線描画法を用いて超高密度ドット列パターン形成の限界を探るべく研究を進めた結果が報告された。実験の結果、2 Tb/in2に相当する18 nm×18 nm微小ピッチのドット列形成が限界であることが分かった。さらに、エッチング、転写プロセスに適応可能であることが示された。
2.「パターンドメディア用EBマスタリング装置のブランキングレス描画技術」
宮崎武司、林國人、小林一彦、久芳幸夫、森田久幸、二田英之、○大井英之 (クレステック)
 新方式ブランキングレス描画機能を持つ回転ステージEBマスタリング装置を開発した。高解像度、高精度、高速度を兼ね備え、1 Tbit/in2級の高記録密度パターンドメディアの原盤加工の可能性を確認できた。
3.「パターンドメディア用シリコンおよび石英モールド製造技術の開発状況」
○法元盛久、伊藤公夫、桑原尚子、石川幹雄、千葉豪、福田雅治、栗原正彰 (大日本印刷)
 加速電圧100 kVの電子描画装置とZEP520Aおよび新化学増幅型レジストを用いたプロセスによる、パターンドメディア用のシリコンおよび石英ナノインプリントモールドの開発状況について報告された。
4.「超短パルスレーザ利用GdFeCo超高速磁化反転」
○塚本新1,2、伊藤彰義1 (1日大、2JST)
 GdFeCo金属磁性合金につき、40 fsのパルス光照射による光誘起磁化反転、フェリ磁性角運動量補償点近傍における磁化応答の高速化現象、超高速レーザ加熱によるサブpsでの磁化反転現象について報告された。
5.「スピントルク磁化反転におけるスピンダイナミクス」
○安藤康夫1、青木達也1、玉川聖1、渡邉大輔1、水上成美1、家形諭2、谷口知大2,3、今村祐志2、永沼博1、大兼幹彦1、井波朝陽1、宮崎照宜1 (1東北大、2産総研、3筑波大)
 スピントルク磁化反転をナノ秒領域で観測する手法を概説し、実時間でのスピン注入磁化反転の検出結果が紹介された。また、磁化の反転運動に伴うスピンポンピングの影響、特にGilbert damping定数と横スピン進入長に関する話題が紹介された。
6.「記録材料のナノサイズ領域における磁化挙動の検討」
○北上修、岡本聡、菊池伸明、島津武仁、佐藤英夫、三塚要、青井基 (東北大)
ビットパターン媒体用記録材料として有望なCo/Pt多層膜を中心に、ナノサイズ領域における磁化反転過程、双安定性、ナノ秒領域における磁化挙動について、これまでの研究成果をまとめた内容が報告された。
7.「ベクトルネットワークアナライザFMR分光法によるNiFe薄膜パターンのマイクロ波アシスト磁化反転検出」
○能崎幸雄、立石健太郎、大田正直、成田直幸、田中輝光、松山公秀 (九大)
 次世代HDDの記録方式として期待されるマイクロ波アシスト磁化反転の実験に関する講演である。コプレーナ線路上に作製したNiFe薄膜パターンのマイクロ波アシスト磁化反転を電気的に検出する方法を概説したのち、磁化反転特性のマイクロ波周波数依存性を調べた結果が紹介された。
8.「シミュレーションによるエネルギーアシスト磁気記録の検討」
○五十嵐万壽和1、赤城文子1、鈴木良夫1、宮本治一1、丸山洋治2、城石芳博2 (1日立、2日立GST)
 LLG方程式を用いた計算機シミュレーションにより、1 Tbit/in2を超える記録密度を達成する方法として提案されているマイクロ波アシスト磁気記録(MAMR)における磁化反転特性を検討した内容が報告された。
9.「熱アシスト磁気記録におけるヘッドディスクインタフェースに関する研究」
○多川則男 (関西大)
 超テラビット記録を実現する熱アシスト記録(TAR)において、大きな課題となるレーザによる局所的な加熱に対する超薄膜液体潤滑膜の高温ナノ挙動について、膜厚が比較的厚い場合(2分子層膜厚程度)に関して実験的に解析し、その減耗メカニズムを明らかとした。

(東北大通研 三浦健司)

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