11.04(Intermag 2005)

タイトル:
記録ヘッド材料に大きな進展 – [FeCo/Pd]積層膜でBs=2.57Tを達成(Intermag2005から)
概要:
 富士通の野間氏らは強磁性FeCo層とわずか1原子層程度の厚さの非磁性Pd層を積層構造することによって2.57Tという大きな飽和磁束密度の実現に成功した。これによってHard Disk Driveの記録密度の向上が加速される可能性が出てきた。
本文:
 これまで自然界に存在する強磁性材料の飽和磁束密度(Bs)はスレーター・ポーリング曲線に代表されるCoFe(70:30 at.%)の2.45Tが最大であった。しかし、Hard Disk Drive (HDD) 高密度化のためには、今後も、記録媒体の保磁力の増加や記録ヘッドのコア幅の減少が避けられない。書き込みヘッドの書き込み能力を確保するためにはより高いBsを有する強磁性材料を開発する必要がある。
  富士通の野間氏らは(講演番号DB 01)、Cr下地層上に厚さ1.7nmのFeCo(70:30 at.%)層と0.14nmのPd層を25周期積層した多層膜を開発し、従来のFeCo薄膜よりも高い2.57Tという大きなBsの実現に成功したと報告した。Bsが増加する要因はPd層と隣接するFeCoの磁気モーメントが増大したためと推測されている。
  これまで、強磁性材料の高Bs化はもっぱら新材料の探索がほとんどであったが、今回のような多層膜化によるアプローチはあまり例を見ない。今後、材料や積層構造、作製プロセス等の改良によってさらなるBsの向上が期待できる。本技術を実用展開するためには、このような1原子層レベルの薄い膜を含んだ多層膜をいかに再現性よく作製できるかがカギとなりそうだ。今回の発明によって、一時停滞気味であったHDDの記録密度の上昇が再び加速される可能性が出てきた。

(アネルバ 恒川 孝二)