3.05

3.05:TMRC2004

新しいタイプの垂直磁気記録媒体

 8月11日~13日、米国コロラド州ボルダーでThe Magnetic Recording Conference 2004 (TMRC2004)が開催された。
 ミネソタ大学のVictora等から、結晶粒内部を磁気異方性の大きな磁性層と磁気異方性の小さな磁性層(軟磁性層)の二つの層で構成する新しいタイプの垂直磁気記録媒体が提案された(A1: Composite Media for Perpendicular Magnetic Recording)。軟磁性層も粒子間は磁気的に孤立している。磁化容易軸方向近傍に外部磁界を印加した場合、まず軟磁性層の磁化回転が進行し、その結果、磁気異方性の大きな層には、界面における交換結合(交換結合による場)と外部印加磁界の両方により斜め方向に実効磁界が作用し、スイッチング磁界が低減する。各層の磁化方位をそれぞれ一方向に単純化したモデルを用いたLLG(Landau-Lifshits-Gilbert)方程式によるシミュレーションの結果、粒子内部の記録層と軟磁性層の界面の交換結合の強さを適度な大きさにすることが重要なポイントであり、磁気異方性の大きな層と軟磁性層の体積比を1:2程度にして、且つ飽和磁化の大きさを適切に調整することにより、熱安定性と飽和記録の両立に関して45度配向媒体と同程度の効果が得られると報告している。
  実際の物作りの上では、界面の交換結合の適切な制御、軟磁性層の粒界も十分に分離させること等が重要なポイントであろう。また、粒子形状が膜厚方向に細長くなるため、実際の磁化反転機構において理論計算通りの高いエネルギーバリアが得られるかも課題であると考えられる。
  ポスターセッションでは、同グループから実際に試作した媒体についても報告があり、残留保磁力の測定時間依存性の測定結果から、スイッチング磁界が低くなってもKuV/kT値は高いことが示された。しかし、実験的に最適化した軟磁性層の膜厚は理論予測よりもかなり薄く5 nm(異方性が大きい層の膜厚は13 nm)である等、今後の理論的且つ実験的な検証が期待される。

(東北大 島津 武仁)