3.04

3.04:NAPMRC2004

垂直記録媒体の新規な提案TIM

 8月10日、米国コロラド州ボルダーにおいて開催された North American Perpendicular Magnetic Recording Conference 2004(NAPMRC2004)において、元IBMのDavid Thompsonは垂直磁気記録の実用化に向けての業界の取り組みに対して奮起を求めた(Invited talk:Thoughts on Perpendicular Recording)。
 インダクティブヘッドからMRヘッドへの変更時は、HDDのあらゆる要素技術部門にブレークスルーが求められ、まとめることは大変な事業であった。GMRの導入時はヘッド部門だけが影響を受けたのが、HDDとすれば大きな革新ではなかった。これらと比較すると、垂直記録の導入はMRヘッドへの移行時ほど大変ではないかも知れないが、結構多くの部門が影響を受けるので、十分に戦略的な取り組みが必要である。これからは「垂直記録が正常な記録であり、面内記録が非正常な記録と考えて行動することが肝要である」という。
 本講演の中で、同氏は1 Tbit/in2記録の実現に向けThompson’s Ideal Medium(TIM)を提案した。基本はディスクリートトラックと呼ばれるディスク基板技術と、円周方向に2 nm、トラック幅方向に50 nmであるような結晶粒形を形成する技術とからなる。これは直径11 nmの結晶粒に相当する筈だから、通常のヘッドで書けるKu(Hc)でも熱揺らぎは問題ない。結晶粒の厚さは1 nmを見積もっており、線密度方向には約3 nmの周期性を持ち、現状に比べて大幅に線密度分解能が向上する。遷移幅は1 nmでジッタは1.5 nmになるだろう。
 このようなTIMをどうやって作るかという大問題を具体的に提案したわけではないが、垂直記録における「書きにくい、分解能があがらない」という課題をクリアにして見せてくれた価値は高い。

(信州大 三浦 義正)