199.01

【分野】磁気物理

【タイトル】スピントロニクスの新現象 ~磁気体積効果~

【出典】
・Hiroki Arisawa, Hang Shim, Shunsuke Daimon, Takashi Kikkawa, Yasuyuki Oikawa, Saburo Takahashi, Takahito Ono, Eiji Saitoh, “Observation of spin-current striction in a magnet”,
Nature Communications, 13, 2440 (2022) DOI:10.1038/s41467-022-30115-y

・JSTウェブサイト 2022年05月11日
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20220511/pdf/20220511.pdf

【概要】
 東京大学や東北大学の研究チームにより,スピン流を用いて強磁性体の体積を変調できる磁気体積効果が実証された.スピントロニクスの新現象であり,マイクロマシンなど様々な応用が期待される.

【本文】
これまでにスピントロニクスでは,GMRやTMR,磁気抵抗メモリなど様々な研究開発が進められてきた.2018年には齊藤 英治 氏らNIMS,東北大学の共同研究により,異方性磁気ペルチェ効果の研究成果が報告された.
最近では,同氏ら東京大学,東北大学の共同研究により,新たにスピン流を用いて強磁性体の体積を変調できる磁気体積効果が実証された旨,発表があった.
強磁性体にはTb0.3Dy0.7Fe2を用い,Pt/Tb0.3Dy0.7Fe2積層膜において,Pt中のスピンホール効果を用いてスピン流をTb0.3Dy0.7Fe2薄膜に注入したところ,同薄膜の膜厚が厚くなった.一方,W/Tb0.3Dy0.7Fe2積層膜において,スピンホール効果による注入スピンを逆向きにした場合,Tb0.3Dy0.7Fe2薄膜の膜厚が薄くなった.これらの実験事実より温度や磁場の変化だけでなくスピン流によっても磁性体の体積が制御できることを明らかにした.
本研究の成果は,超精密機械部品や力学素子の作製や制御の可能性があり,例えばマイクロマシンへの応用など新たな異分野連携が期待される.
(信州大学 曽根原 誠)

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