188.01

【分野】磁気物理

【タイトル】磁界と圧力でマルチに冷却可能な酸化物新材料

【出典】
・Yoshihisa Kosugi, Masato Goto, Zhenhong Tan, Daisuke Kan, Masahiko Isobe, Kenji Yoshii,
Masaichiro Mizumaki, Asaya Fujita, Hidenori Takagi, and Yuichi Shimakawa,
“Giant multiple caloric effects in charge transition ferrimagnet”, Scientific Reports 11,
12682 (2021) DOI:10.1038/s41598-021-91888-8
・SPring-8ウェブサイト 2021年06月21日
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2021/210621/
・京都大学 2021年06月22日
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2021-06-22
・日本原子力研究開発機構 令和3年6月21日
https://www.jaea.go.jp/02/press2021/p21062101/

【概要】
 京都大学化学研究所などの研究チームにより,電荷転移を示すペロブスカイト構造フェリ磁性酸化物BiCu3Cr4O12が磁界および圧力を加えた際に大きな熱量効果(マルチ熱量効果)を示すことを明らかにし,高効率な熱制御を実現する新たな固体熱制御材料となることを実証した.

【本文】
京都大学化学研究所の小杉 佳久,後藤 真人,譚 振宏,菅 大介,島川 祐一 諸氏ならびに日本原子力研究開発機構の吉井 賢資 氏,高輝度光科学研究センターの水牧 仁一朗 氏,産業技術総合研究所の藤田 麻哉 氏,ドイツ・マックスプランク固体研究所の磯部 正彦,高木 英典 諸氏の共同研究チームは,電荷転移を示すペロブスカイト構造フェリ磁性酸化物BiCu3Cr4O12が磁界および圧力を加えた際に大きな熱量効果(マルチ熱量効果)を示し,高効率な熱制御を実現する新たな固体熱制御材料となることを実証した.
 食料品や薬品など,最近では新型コロナウィルスのワクチンの冷凍・冷蔵,エアコンによる冷房など,世界の電力消費の25~30%が冷却に使われているといわれるほど,熱の制御は人類のエネルギー・環境問題において重要な課題である.前述の熱量効果を利用すると高効率で環境への負荷の小さい冷却などが実現できるため熱に関する諸問題の解決に繋がる.例えば,東北大学の新津 甲大,貝沼 亮介 諸氏らは,Cu-Al-Mn系超弾性合金において応力を外場とする熱量効果で22 Kまで冷却効果が得られたことを明らかにしている.
小杉 氏らは,電荷転移を示すフェリ磁性酸化物BiCu3Cr4O12が磁界と圧力の2つの異なる外場に対して熱量効果(マルチ熱量効果)を示すことを明らかにした.この材料は,約4 MA/mの磁界を印加した場合,約3.9 Kの断熱温度変化が得られ,490 MPaの圧力を印加した場合,約4.8 Kの断熱温度変化が得られ,さらに磁界と圧力を同時に印加することでより大きな断熱温度変化が得られる特長を有する.加えて,電気熱量効果が生じる可能性も見出されており,更に大きな断熱温度変化が得られる可能性があるため,高効率な冷却機器の開発などへの応用が考えられ,前述の熱に関する問題を解決する大きな柱になると期待される.
(信州大学 曽根原 誠)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


磁気物理

前の記事

187.01
磁気応用

次の記事

189.01