159.01

【分野】 磁気物理

【タイトル】
低磁気異方性を利用した弱磁場におけるスピンスパイラルと孤立スキルミオンの安定化

【出典】
“Stabilizing spin spirals and isolated skyrmions at low magnetic field exploiting vanishing magnetic anisotropy”

Marie Hervé, Bertrand Dupé, Rafael Lopes, Marie Böttcher, Maximiliano D. Martins, Timofey Balashov, Lukas Gerhard, Jairo Sinova & Wulf Wulfhekel
Nature Communications 9, 1015 (2018).

【概要】
Marie Hervé, Wulf WulfkheleらのグループはRu単結晶基板上に成長させたCo超薄膜のスピン偏極走査トンネル顕微鏡測定を行い、スキルミオン相を低磁場環境下においても安定化できることを示した。

【本文】
スキルミオンはトポロジカルに保護されたノンコリニア磁気構造であり、微小な電流密度での駆動が可能な孤立したスキルミオンを利用した高速・省電力な磁気メモリ素子の開発が期待されている。これまで薄膜材料においては、ジャロシンスキー守谷相互作用(DMI)や磁気異方性および交換相互作用の競合の結果現れるスピンスパイラル相を基底状態に持つ系に数テスラの強磁場を印加することによってスキルミオン相を発現させてきた。また、DMI定数は磁気異方性に比例するため、薄膜-下地基板間の相互作用を利用してDMI定数を増大させることが重要であり、スピン軌道相互作用の大きい5d金属単結晶が下地基板に用いられてきた。
カールスルーエ工科大学(ドイツ)のMarie Hervé, Wulf Wulfkheleらのグループは4d金属Ru(0001)単結晶上にCo単原子層を成長させ、その磁気構造をスピン偏極走査トンネル顕微鏡(SP-STM)を用いて原子スケールで観察した。結果、ゼロ磁場下でスピンスパイラル磁気構造がCo単原子層の基底状態として観測された。さらに、Co単原子層表面の磁気構造の印加磁場依存性を調べ、約0.15 Tの低磁場環境下で孤立スキルミオンが観測され、さらに、残留磁化状態においても安定的に存在することがわかった。従来の研究結果とは対照的にスキルミオン相の発現に強磁場を必要としない理由として、4d金属Ruの弱いスピン軌道相互作用に起因して、系の磁気異方性が小さく、基底状態であるスピンスパイラル相と強磁性相のエネルギー差が小さいことが理論計算により示された。

(東京大学 物性研究所 宮町俊生)