132.03

【分野】磁気物理

【タイトル】磁気スキルミオンの磁場をリアルタイムで可視化

【出典】
Science Advances, doi: 10.1126/sciadv.1501280
Direct observation of Σ7 domain boundary core structure in magnetic skyrmion lattice
東京大学工学部プレスリリース
http://www.t.u-tokyo.ac.jp/shared/press/data/setnws_2016021613025124212349560_860607.pdf

【概要】
東京大学大学院工学系研究科附属総合研究機構の柴田直哉准教授らは走査型透過電子顕微鏡法(STEM)と独自開発の分割型検出器を用いることにより、磁気スキルミオン内部の磁場をリアルタイムで可視化することに初めて成功した。これにより、材料中の局所磁場の直接観察が容易になり、ナノレベルの磁気構造解析に新しい展開が期待される。

【本文】
磁気スキルミオンはナノメーターサイズの特異な渦状の磁気構造体であり、次世代磁気デバイス素子への応用が期待されている。磁気スキルミオンは特定の条件下でその配列が規則的になり、あたかも結晶のような周期構造を形成する(磁気スキルミオン結晶)。実際の磁気スキルミオン結晶には原子の結晶と同じようにその周期性が乱れる界面や欠陥が存在することが知られており、その挙動を理解することが工学応用するためには重要であると考えられている。しかしながら、従来の磁場観察では磁気スキルミオン結晶中の乱れた領域の磁気構造をリアルタイムで可視化することは難しく、新しい手法開発が待望されていた。
柴田らの研究グループは、ナノスケール観察で有力な手法である走査型透過電子顕微鏡法を用いた観察において、試料近傍を無磁場条件下に保ったままナノサイズにまで電子線を絞り込む電子光学系を構築し、さらに試料中の磁場による電子線偏向を分割型検出器を用いて高感度に検出することで観察に成功した。さらに、分割型検出器からの検出信号を高速に磁場分布に変換するソフトウエアを開発し、磁気スキルミオンの内部磁場のリアルタイム可視化に成功した。
この手法を用いて、磁気スキルミオン結晶同士の界面であるドメイン境界を観察した結果、そのコア部分には大きさや形状の異なるスキルミオンが周期的に形成されることを初めて見いだした。本結果は、周囲の環境変化に応じて磁気スキルミオンがその構造をフレキシブルかつ安定に変化させる能力を有することを示唆しており、今後のデバイス応用に重要な知見を与えると考えられる。また、本観察手法は、磁石材料、スピンデバイス、磁気メモリなどの磁性材料全般に応用可能であり、それら開発や性能向上に大きく貢献することが期待される。

(岩手大学 三浦健司)