103.03

分野:
磁気物理
タイトル:
単一スキルミオンの生成・消滅
出典:
“Writing and Deleting Single Magnetic Skyrmions” N. Romming, C. Hanneken, M. Menzel, J. E. Bickel, B. Wolter,, K. v. Bergmann, A. Kubetzka, and R. Wiesendanger, Science 341, 636 (2013).
 
 
概要:
 Ir(111)表面上に成長させたPdFe薄膜に発現したスキルミオン結晶をスピン偏極走査トンネル顕微鏡を用いて観測した。さらに、スピン偏極電流注入に起因するスピントランスファートルクによって原子欠陥に固定された単一スキルミオンを可逆的に生成・消滅できることを示した。
 
 
本文:
 トポロジカルに保護されたスピン磁気構造であるスキルミオンは微小電流密度で駆動が可能なため、高速・省電力な次世代磁気メモリ素子への応用が期待されている。「スキルミオンメモリ」実現のためには個々のスキルミオンの制御手法を確立する必要がある。ハンブルク大学(独)のWisendangerグループはIr(111)表面上にPdFe薄膜を成長させ、試料表面の磁気構造を原子スケールの分解能を持つスピン偏極走査トンネル顕微鏡(SP-STM)を用いて調べた。試料は印可磁場の値によって異なる表面磁気構造をとり、ゼロ磁場下ではスピンスパイラル相、約1~2テスラではスキルミオン相、2テスラ以上では強磁性相が発現している。さらに、高いエネルギーをもったトンネル電子を注入することによって強磁性相においても単一スキルミオンが生成されることを明らかにした。形状像と磁気像との比較により試料表面の原子欠陥付近で単一スキルミオンは生成されやすいと考えられる。生成された単一スキルミオンは再度高いエネルギーをもつトンネル電子注入により消滅し、強磁性相に可逆的に戻ることを示した。生成・消滅の起源はスキルミオン相-強磁性相のスイッチングレートの試料-探針間のバイアス依存性、トンネル電流依存性および印可磁場依存性を詳細に調べた結果、STM探針から注入されるスピン偏極電流により誘起されるスピントランスファートルクによると考えられる。

(東大物性研 宮町俊生)