101.02

分野:
磁気物理
タイトル:
磁気コンプトン散乱を用いたスピン・軌道磁化ループの測定
出典:
M. Itou, A. Koizumi, Y. Sakurai, Appl. Phys. Lett. 102, 082403 (2013)
 
 
概要:
高輝度光科学研究センターと兵庫県立大は従来の磁化測定法に磁気コンプトン散乱法を新しく組み合わせ、スピン磁気モーメントの磁気ヒステリシスと軌道磁気モーメントの磁気ヒステリシスを分離して、高精度に測定する手法の開発に成功した。これまでも同様の実験が報告されているが、今回開発した高精度で測定する手法は磁気ヒステリシスを直接測定する手法であり、交換スプリング結合、交換磁気異方性などによって磁気ヒステリシスが非対称な場合も測定可能である。スピントロニクスデバイスや永久磁石材料の設計や性能評価に有用なツールとして期待される。
 
 
本文:
これまでも磁化測定法に磁気コンプトン散乱法を新しく組み合わせ、スピン磁気モーメントの磁気ヒステリシスと軌道磁気モーメントの磁気ヒステリシスを分離して測定する手法は報告されているが、磁気コンプトン散乱測定におけるX線分光器の除振、検出器の電磁ノイズ削減を改善した結果、高精度化に成功した(絶対値の精度1%)。SmAl2は10Kで0.2μB程度の小さな磁気モーメントを有する強磁性体である。磁気コンプトン散乱の測定の結果、スピン磁気モーメントは-3.5μB、軌道磁気モーメントは3.7μBであり、両者がほぼ同じ大きさで向きが逆であるため0.2μB程度の小さな磁気モーメントを有することがわかった。これは従来報告されている通りである。さらに、スピン磁気モーメントの磁気ヒステリシスと軌道磁気モーメントの磁気ヒステリシスを測定したところ、磁化の符号の反転したほぼ同様な磁気ヒステリシスが観測され、保持力は一致することが初めて確認された。本技術は交換磁気結合を利用する材料、例えば永久磁石材料の設計や性能評価に有用なツールとして期待される。

(群馬大学理工学部電子情報部門 櫻井 浩)